第5話 謎の穴と7番目の女
その|女は俺をじっと見つめ、「すべてお前のせいだ」と低く唸るような声で呟いた。
俺はその女を知らないが、そう言われるとやはり俺のせいだという気になってくる。とりあえず俺はその女に謝ってみた。
「ごめん、やっぱり俺のせいなんだね」
女は、少しだけ戸惑った表情をみせたが、また「すべてお前のせいだ」と呟いた。
俺はなんだか疲れてしまった。知らない女に何を言われても別に気に留めないが、「すべてお前のせいだ」と繰り返すだけの女の相手をし続けるのはいささか面倒だ。
俺は少し苛々しながら「もうどこかへ行ってもらえませんか」と女に声をかけた。すると、女の足元の床がすうっと黒くなり、その女はその黒い床にずぶずぶと沈みこんでいってしまった。面倒くさい相手でも、いざ居なくなってしまうと少し寂しいものだ。
その直後、俺がいる部屋の金属製の重いドアが「ギ、ギ、ギ、ギ」と鈍い音をたてながらゆっくりと開いて、今度は男が目の前に現れた。
うむ、この男は知っている顔だ。男はさっきの女よりもしっかりした声で、「1453番、出なさい」と言った。行先は分かっていたが、まだ行きたくはなかった。でも行くしかないらしい。
俺は、せめてさっきの女が誰なのかだけ思い出したかった。心当たりはある。おそらく俺がここに来る前、7番目か8番目に首を絞めた女だと思う。だが、その順番がどっちだったか思い出せない。
俺は階段を昇りながら必死に思い出そうとしていた。だが、もう考える時間が尽きてしまった様だ。俺の足はもう13段目を登りきってしまった。
「まあいいか、向こうでゆっくり思い出そう」
目隠しをされている俺には見えないが、おそらく俺の足元の床も、間もなくすうっと黒くなるのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます