金がなくては戦はできぬ、最弱スキルは世界を救う!?

@moju

第1話 落第者

「デュラン、お前は試験不合格だ」

突然の不合格通告に頭が真っ白になり、足に力が入らなくなりその場に崩れ落ちてしまった。

「そんなところでいられると邪魔だ。さっさと捨ててこい」

不合格通告をした試験官は近くにいる兵に指示し、俺の両腕を掴んで会場から放り出そうと引きずりだした。

「ちょっと待ってくれ!」

兵の両腕を振り払い、試験管の双肩を掴んだ。

「どうして俺が不合格なんだ!きちんと課題もこなしたし、模擬戦もちゃんと勝ったじゃないか!俺が不合格なら、なんで負けたそいつらが合格なんだよ!おかしいだろ!!!」

騒いでいる俺が珍しいのか、それとも不合格になった俺が面白いのかクスクス笑いが聞こえてくる。が、そんなことを気にしている余裕はなかった。なかったというよりも腹部にきた強烈な衝撃に何も考えられなかった。後ろに吹き飛ばされ、痛みに耐えながら顔を上げてようやく、蹴られたことに気がついた。

「見苦しいぞ」

そう言うとおもむろに、帯刀していた剣を引き抜き、うち伏せている俺の顔のすぐ横に突き立てた。顔のすぐ側に刀身の冷気が感じられ血の気が引いた。

試験官は顔を近づけて、周りに聞こえないようにつぶやいた。

「本来なら教えてやる義理はないが、特別に教えてやる。お前が不合格なのはお前のギフト(能力)が過去稀にみることがない最弱だからだ。遥々辺境からでてきたんだってな。お前みたいな雑魚はどうせすぐ死ぬんだからさっさと帰って親の墓にはいってやれ。それがお前にできる最高の親孝行だ」

背を向けたとき、全力で殴りかかった。せめて一発殴らなきゃ気がすまねえ!

突き刺さっていた剣を抜き、試験官に殴りかかった。

だが、その拳は届かなかった。届く前に目に見えない壁に阻まれたのだ。

「なんだよ、こ…」

言い終わる前にその見えない壁にすごい力で押され、背面にあった壁に押しつぶされた。あまりの衝撃に呼吸ができなかった。

「ギフトとはそれ自体が特殊能力であり、生まれ持った才能だ。お前のような

「剣を力に変える」程度のギフトなど存在意義を疑ってしまう。…おっとこれは失言だ、取り消そう」

足を引きずられながら、消え行く意識の中であいつは確かにそういった。

「もう二度と会うことはないだろう落第者」


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