第62話 執念
「神をも騙す行為だ。さぞかし慎重に事を運んだのだろうね。全く君は大したものだよ。一体いつから計画していたのかね?」
ギルゴマはまるで騙された事が面白い出来事だとでも言いた気に聞いてきた。
「…買い被り過ぎさ。俺ごときが独りでこんな大胆な計画を実行出来る訳がないだろう」
カナタは迷惑そうに答えた。
「ほう、ではあの娘たちかね?」
「…あんたは人間を舐め過ぎている。だから足元を掬われるのさ。俺達なんかより余程あんたに詳しく、あんたを打倒したい人間はこの世界にもいたって事さ」
「ふむ、それはユーリィの事かね?」
「惜しいな」
「なるほど、あの老いぼれの事だね?」
「大賢者と言うべきだろうな。ゴードンの執念が俺を貴様の前まで辿り着かせた」
「ふむ、しかし君達が行動を起こした時にはあの老人は死んでいたはずだがね」
「ゴードンがお前に殺された時、最後に言ったのさ。ユーリィの事と自分の計画の実行を頼むってな。ご丁寧にこれまでの出来事とこれからの計画を記した手記まで残していたぜ」
「なるほど、やはりあの老人にはもっと早く死んでもらうべきだったようだ」
「エルフィンドワーフ族はお前に騙されていたようだな」
「騙す?私は一切嘘など吐いたつもりはないがね」
クックックと笑いながらギルゴマは答えた。
「ただこちらの望みを告げただけだよ。それを神託と捉えるのは向こうの勝手だがね」
「はっ、管理者が自分の信者に望みを告げれば、神託になる事ぐらい分かり切った事だろうが」
「あぁ、信者と言うのは実に使い勝手の良い駒だったよ。私の望みを言うだけで、あの老人を殺し、魔王を召喚し、そして私を降臨させてくれたのだからね」
「その信者を利用したお前の企みの最初の犠牲者がエルフィンドワーフ族。そしてユーリィ達の母親だろう?!」
「…言葉に気を付けたまえ。私は今、非常に機嫌が良い。だがそれは何でも許すという意味ではない」
「はん、事実を言われて怒ったのか?ならばもう一度言ってやろう!お前の企みの最初の犠牲者こそ、ゴードンの娘、カミル・エルフィンドワーフだ!ゴードンは娘の無念を晴らす為にお前を打倒する計画を立てた。俺達は単なる実行者さ」
「貴様、何を知っていると言うのだ!?」
「あんたが想像している以上に知っているさ。神の計画。恐らくは…第三世代へ戦争を仕掛ける為の計画だろう」
「…なるほど、確かに私は人類を侮っていたようだな。まさかそこまで見抜いていたとは」
「何度も言っているだろう?これはゴードンの執念さ。エルフィンドワーフ族を騙し、娘を生贄同然に扱われた父親の思いだ」
「なるほどね、だが君は一つだけ間違っている。私は結果的に第三世代へ戦いを挑むのであって、決して最初からエルフィンドワーフ族を、そしてカミルを犠牲にするつもりなど無かったのだよ」
「は、戯言を言うな」
「いや、これは誓って真実さ。管理者の名に懸けても良い」
カナタは驚いた。
管理者が自らの名を懸けると言う宣言は云わば真実の誓いだ。
もしそれが嘘であった場合は、例え管理者と言えどもシステムから裁きが与えられる。
それが管理者達のルールだった。
カナタはアルファ達の話からそれを知っていた。
「よかろう。君がそこまで知っているのであれば、少し真実を話そうではないか」
ギルゴマはゆっくりと自分が第三世代へと反旗を翻す決心をした、その切っ掛けを語り始めた。
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