第61話 懺悔

カナタは自分の想いを無事に告げる事が出来て、ホッと一息吐いた。








この一言を伝える為に多くを犠牲にしたのだ。


ここまで来て伝えられなかったとしたら、天国にいるゴードン辺りに、何を言われるか分かったもんじゃない。





そう考えてカナタはクスリと笑った。








なあ、ゴードン。


お前も天国から見てるのか?


お前の見たがっていた。一生に一度の告白だぜ?








カナタは空を見上げてフッと息を吐いた。





さて、と。





「すまないな。随分と待たせただろう?」





カナタは興味深そうにこちらを見るギルゴマへと振り返り、声を掛けた。








「いや、気にすることはない。中々に面白い物を見せて貰ったよ」





ギルゴマは頭を振って答えた。








カナタとしても意外なのだが、この狂った神はカナタがカナと話している間、一切の攻撃をしてこなかった。





それどころか、おそらくだが周りの魔物達すら近付く許可を与えなかったのだろう。


カナタの周りは不自然なほどに空白地帯が出来ている。





神の気まぐれか。


それとも何か意図があるのか。





カナタは疑問を抱いたが、もはや関係ない事だった。








もう思い残す事はない。





ただこいつを倒す事だけに集中する。








カナタは気持ちを切り替え、ギルゴマへ飛び掛かろうとした。








しかし、ギルゴマはその気配を鋭く察知して、カナタを手で制した。








「まあ、待ちたまえ。君には非常に興味深い物を見せて貰った。御礼と言う訳でもないが、ここは私の話もしようではないか。」





「…懺悔でもしたいのか?」





「懺悔?何を懺悔すると言うのかね?私にその様なくだらない感情は無いよ。ただ、少し、君と話をしたくなっただけさ。それに君にはいくつか聞きたい事もある」





カナタの質問にギルゴマは嘲笑で答えた。








「だが、その前に、まずは君の事を褒めよう。今回の一連の行動は見事だった。一体どこから計算していたのかね?」





「…何の事だ?」





「恍けるのは良し給え。君達の作ったヴィジョンとか言う魔法。私も侮っていたよ。まさかアレらが全ておとりだったとは思わなかったよ。邪魔な存在だとは思ったが、下手に手を出すと、覚醒を促しかねないからね。まあ取るに足らない些事だと思い放っておいたのだが…よもや第五世代を堂々と隠れ蓑にするとはね。あの子達はこの事実に気付いているのかね?あの、私の子供達は」





「…誰にとっての不幸かは知らないが、お前が黙っていれば、一生気付かなかっただろうな」





「クックック、そうだろうね。なにしろユーリィ以外は全員が孤児として育ったはずだからね」











カナタはギルゴマの話など聞かずに、さっさと切り掛かれば良かったと後悔していた。








この事実に、パーティーメンバーは今頃どう思っているのだろうか?





俺達は仲間を利用していたんだ。





ただ勇者を救う為だと、信じてくれていた仲間達は、この言葉をどう思っているだろうか?








すまない、みんな。








懺悔するべきは俺の方だ。








カナタはこの場にいない仲間達に、心の中で謝った。

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