第47話 降臨
「なによ、それじゃあまるで私にだけ逃げろって言ってるみたいじゃあない!もし逃げるのなら、あんたも一緒に逃げるのよ。それが駄目なら私も共に戦う。難しい事じゃなわ。いつもと同じよ、私達はいつも一緒でしょう?」
カナはどうしてこんな分かり切った事を今さら言わせるのか、カナタの真意が理解できなかった。…いや、理解したくなかっただけなのかもしれない。
カナタの言っている意味は分かっていた。
自分が死ねば魔王を止める手段が無くなる。
つまりはこの世界が滅びると言う事だ。
それを回避するために自分はこの世界に召喚されたのだ。と、カナは大賢者ユーリィ・エルフィンドワーフから聞かされていた。
今更ながらその事の重大さに嫌気がさす。
「カナ、分かっているはずだ」
カナタは真剣な表情でこちらを見つめていた。
「分からない。一緒にこのピンチを切り抜ければ良いだけの話よ。大丈夫よさっきみたいに二人で…」
だがカナのその言葉は、カナタが無言で首を横に振ることで拒否された。
「違うんだカナこんなものピンチでも何でもない。本当に恐ろしいのは…」
カナタが何かを言いかけた時、少し離れた所から転がるように何者かが駆けつけてきて、カナとカナタに声を掛けた。
「勇者よ!ご無事ですか!」
遠征軍指揮官グランが一人、この場に辿り着いた。
部隊はまだ奥の方で戦っている。
「おぉ、やはり貴公も生きておったか。さ、この場からひとまず退散しよう」
そう言ってグランがカナに手を伸ばした。
カナは見知った顔を見てホッと一息ついた。
だがしかし…。
「間違っていたらすまないな。グラン指揮官」
そう言ってカナタはグランの伸ばした手を一刀両断に切り落とした。
「きゃ!」
カナが驚きの悲鳴を上げた
「グアァ!な、貴公!気でも狂ったか?!」
切られた腕を押さえ、よろめきながらグランがカナタを睨んだ。
「だから、間違っていたらすまない。と先に謝ったんだ。カナ後ろに下がっていろ」
カナタは冷たい視線でグランを見ていた。
グランは腕を抑えうずくまっている。
「グウウオッォォックッ」
数刻の苦しそうな呻き声のあと、グランの声は段々と狂気染みた笑い声へと変わっていった。
「クックックッ、何故、分かった?お前とグランに面識は無かったはずだ」
グランの顔が醜悪な笑い顔へと変貌した。
「ああ、グランは俺を知らないだろうな。だが俺は知っている。何しろ俺達が選んだ遠征軍指揮官だからな」
「ほう?やはり前の軍務大臣を殺したのは貴様らだったか」
「奴は狂信者だったからな。ご退場頂いた」
「ふん、だが何故分かった?これは変装などとは訳が違う。云わば擬態だぞ?」
「グランは優秀な指揮官だ。何の策も無く一人で無謀に突っ込む男じゃないさ」
カナタは後ろを指さした。
まだ魔物は片付いておらず、退路の確保も出来ていない。これでは助けに来たとは言えない状況だった。
「クックックッなるほど、君は本当に頭が良い男だ」
「まあ、半分はカンだがな。だから最初に謝っただろ?ぶっちゃけて言うなら怪しい奴は最初から全員切るつもりだったのさ」
「クッハッハッハ、お前は良いぞ本当にいい。俺と同じぐらい狂っている!」
そう言ってグランの恰好をした何者かの体が大きく膨らんだ。
「伏せろカナ!」
カナタはカナに覆いかぶさる形で倒れ込んだ。
そこに遅れてグランだったモノがパンッと弾けた。
そして中からは美しい男性が現れた。
髪は銀白色。瞳は赤く輝き、見る物を圧倒する威圧感。
この世界の人間であれば誰もが知っている。この世界そのもの。この世界の最高神。
…管理者ギルゴマ降臨
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます