第26話 奇跡を見る、その7~奇跡は、起きた~

ドクン。ドクン。ドクン。


鼓動が破裂しそうなほど早く脈打った。





神眼?解放?何の事だ?





困惑しながら彼は見事な着地を決め、同時に正面の敵を切った。


さらに魔法の連射で敵を倒す。


だが、途中で彼は心臓の高鳴りに息苦しくなり、胸を押さえた





くそ、なんだってんだ?


その時、彼の脳裏にベータの言葉が蘇った。





「使うか使わないかはあなたの自由、でも使った方が絶対に確率は上がる」





これがそうだと言うのか?ベータ?


彼は息苦しさで乱れそうになる呼吸を整えた。


そしてベータに言った言葉を思い出す。





「それが何か分かった時は遠慮なく使わせて貰うよ、ベータの言葉は絶対だからな」





そうだな、ベータの言葉は“絶対”だ。


クスリと笑い、彼は言った。





「アクセプト!」





その瞬間、彼を包んでいた淡い光が爆発的に膨張し、強く激しい光の渦となって…弾けた。














「…届いた。奇跡は、起きた」





突然ベータが声を上げた。





驚いたメンバーが見ると、ベータは無表情なまま泣くという器用な表情をしていた…いや不器用な表情と言うべきであろうか?





「急いで私と姉様の心眼に魔力パスを通して」





ベータは涙を拭くと、いつもの通りの淡々とした口調で言った。





「どういうことですか?」





レーナが聞いた。





「今から彼の脳には膨大な量の情報が流れる、それをみんなで処理する。そうしないと彼の脳は焼き切れてしまう」





「ひょっとして、神眼が覚醒したの?」





アルファの質問にベータは頷いた。





「大変じゃない!あれは人間に制御できる力じゃないわ!」





アルファの言葉で事の重大さに全員が気付いた。





「だから、彼の事を良く知る、あなた達の力が必要」





ベータがぺこりと頭を下げた。





「お願い力をかして欲しい」








「あー、…つまり、俺たちが露払いをするって事か?」





ホレスが簡潔に聞いた。


ベータが頷く。





「ならそれは俺達の仕事だな!」





ホレスはニカっと笑いながら言った。





「そうですね、私達はいつでも彼の露払いが役目よね」





レーナがため息と共に言った。





「もう!みんな素直じゃないんだから!もっと正直に教官の力になれる事を喜びましょうよ!」





アリシアは泣き笑いで言った。





「ねえ?ベータ、貴女はさっき、奇跡は起きたって言ったわよね?もしかして…見えたの?」





アルファがベータに問いかけた。





「見えた、彼が勇者の前に立つ姿が」





ベータは頷きながら答えた。





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