第4話 回顧録~レーナ・マクガーデン~
レーナはこの非常識なパーティーから誘いを受けた時、一体自分に何を求められているのかが分からなかった。
一人一人の能力が高く、戦いにおいても冒険においても危なげなくこなすメンバー達を見て、自分の出る幕など無いのではないか?そう思っていた。
自分は臆病でいつも慎重論ばかり言っている。
彼の意見と対立する事も多い。
レーナはしばらく考えた末に正直にパーティーリーダーである彼に聞いた。
自分は必要ないのではないか?と。
しかし彼は笑って言ったのだ。
「君はとても重要な役割を果たしているさ。このパーティーにはどうにも血の気が多い面子が揃い過ぎている。君は常に冷静な判断が出来る。だから今まで通り変わらないでいて欲しいんだ」
この時はじめてレーナは今のままで良い、と彼に認められた気がした。
以来レーナはこのパーティーにおける常識担当を自負するようになった。
誇りを持って慎重論を唱えるようになった。
それは時に彼を批判しているようにも見えただろう。
だが彼はあの日の最後に申し訳なさそうに言ったのだ。
「すまない、損な役回りをさせるな」と、レーナはそれからことさら反対意見を言う事を心掛けた。
自分のこのパーティーにおける役割はアンチテーゼを言う事だと思ったからだ。
時にはメンバーと衝突する事もあったが彼なら分かってくれている。
そう思うと不思議と辛いと思う事はなくなった。
レーナは常にあらゆる可能性を考えた。
あり得ないと思える事も考えた。
彼がそういう意見を求めていると思ったからだ。
例えばメンバーから裏切り者が出る可能性や冒険が失敗に終わる可能性など、メンバーからは煙たがられる事も言ってきた。
だが今回の彼の裏切りはそのあらゆる可能性の中で最も低いと思っていた事だった。
それだけに、レーナの失望感は大きくなっていた。
ハイヴィジョンで見る彼の後ろ姿を睨みつけながらレーナは考えていた。
彼の生き様に本気で不安を覚え始めたのは一体いつ頃からだっただろうか?
多くの冒険を共にするうちにふと気が付いた些細な違和感、彼はどこか自分の命を簡単に投げ出すような、そんな行動が何度もあったのだ。
レーナにはその奇妙な違和感がとても危ういものに見えた。
この人はいつか自分達を置いてどこか遠くへ行ってしまう。
そんな予感めいた事を考え、しかしレーナは頭を振って思い直したのだ。
その時は自分が命を張って止めるのだ。
きっとそれが自分に課せられた役割なのだから…
しかし今、予感は現実となってしまった。
自分には止める事が出来なかった。
その酷く残酷な後悔がレーナに重くのしかかってくるのだった。
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