学園潜入

 何度かいってるけど、学園は関係者以外立ち入り禁止、セキュリティばっちりの超厳重施設。


 学生や講師だって証明書がないとはいれないしぃ、学園の設備管理や庭の剪定に至るまで、中で仕事をしようものなら正式なぶあつーい書類とぉ……あと紹介状も必要。


 だから学園で日雇いの募集があっても中々来ないのが現状……のはずなんですけどぉ。


 なんでロミアがいるんでしょうねぇ。それも剪定の仕事してるし、さっきの一部始終みられてるしぃ!


 ちょーー恥ずかしいんですけどぉ!


「なにビックリしてるんだ? 俺も一緒にこっちに来ただろ。」


「いや一緒じゃないからねぇ??」


 私とお嬢様は馬車にのって通学してるんですからぁ。乗ってたら気づかないはずがな……。


 あ、まって。そういえばロミアって、馬車の上に乗ってたこと前にあったようなぁ。


 私が気づいたことを察したロミアはニッと笑って頷いちゃってます。マジですか、あの道中すでに上にいたってこと……?


 ロロの奴、気づいて黙ってたわね……っ。


「因みに紹介状はお嬢様にかいてもらったぜ。いやー、流石入るのが大変なだけあって報酬もいいなぁ。ついでの仕事で副収入もらえておれも嬉しい限りだぜ。」


 いいながら彼は木の枝を切ってちゃんと仕事をしてますねぇ。文句のひとつも言いたいですけどぉ、ロミアが来るってことはなにかしに来たってことでしょうしぃ。単に仕事しに来た訳じゃないでしょ?


「で、何しに来たのよぉ。冷やかしに来たわけじゃないでしょぉ?」


「この場所に来たのは心配だったから。お前、結構顔に出さねぇけど辛そうだったし。けど、心配なかったみてぇだな。」


 再びさっきの事を蒸し返されて私の顔は真っ赤になりましたぁ。一番みられたくない人に本性みられたんですよ?そりゃ顔くらい赤くなりますってぇ。


「あ、あれは仕方なく……」


「スゲーかっこよかったぜさっきの!」


 てっきりドン引きされてるのかと思いきや、ロミアは目を輝かせて私に笑いかけてましたぁ。


「いやー、スッキリしたぜ! 言うときは言うんだな。」


「引いてないのぉ?」


「え、なんで?」


 質問にキョトンとされて、私はなんだかバカらしくなってため息をこぼしましたぁ。なんだかロミアって、ほんと人の気も知らないで……助け出してくれるんですからぁ。


「今の忘れてぇ。で、本題は?」


「なんだよ、せっかく心配してきてやったのに。まぁ、本題はレンジュと接触したかったからだな。あいつ調べてみたら今は寮に住んでるらしくて、中に入るしか話せねぇみてぇだったから。」


 お金持ちばかりの生徒が多い学園では学生寮なんて使ってる人少ないですけど、一応あるんですよねぇ寮が。けど寮は学園の敷地内……つまり厳重セキュリティの真っ只中。部外者のロミアが接触するには、確かに中に入るしか手はないですねぇ。


「つー訳で、さっきなんとか合ってきたぜ! ……で、伝言も頼まれた。昼休みに西の庭園にこいだってさ。」


 なんでも騒ぎの主犯を確定させるため、らしいです。ロミアが事情を話したら、協力してくれるようでそのための呼び出しらしいですけどぉ……そんな簡単に確定できるもんですかねぇ。仮定ならできてますけど。


「じゃ、俺はちゃんと伝えたからな! 」


「はいはい、伝えられましたぁ。 」


 もうすぐ朝礼ですし話しすぎてたら怒られちゃいます。ロミアに一度手を振ると窓を閉めました。


「もうお嬢様も意地悪ですねぇ。」


「わざわざ言うことでもないと思ったから。ほら、授業の準備をしましょう」


 さっきまで嫌がらせの現場になってた教室は、私がロミアと話している間にすっかり元通り……というわけでもなく、みんな遠巻きに私をみてます。そんなに怖がらなくてもいいのにぃ。


 ちょっとこれは傷ついちゃいますけど、まぁいいです。ロミアにかっこいいっていってもらったことですしぃ。


 こうして何となく痛い視線を受けながら講義を受け、あっという間に昼休み。


 昼休みに西の庭園……というとお嬢様が上級生を素っ裸にさせたあの場所なんですけど……。


 なんとなく胃が痛い中お嬢様と庭園に向かうと、すでにレンジュと、レンジュの守護精霊のクロネコが既にいました。


「ちょっとぶりぃ」


 ひらりと手を振って見せると、レンジュは手をふり返さずこちらに歩いてきますぅ。クールぶっちゃって、手を振るくらいしなさいよぉ。


「ロミアから事情は聞いた。色々大変みたいだな。」


「なんか巻き込んじゃってごめんねぇ。人手が多い方が助かるからぁ」


 申し訳なくてそういうと、彼は別に、とぶっきらぼうに答えますぅ。ロミアとタイプが真逆なので、温度差を感じちゃいますねぇ。さっきロミアをみたから余計に。


「それよりレンジュ。犯人を確定させるってどうするつもり?」


 横からお嬢様が割って入ると、その足元でクロネコちゃんがにゃーと鳴きました。私とお嬢様と違って動物って言うのが新鮮ですねぇ。


「俺の魔法で人の感情を読むことができる。これから三人でこの辺り一帯を歩き、明らかな敵意を向けてくるやつを探す」


 なんでもレンジュは向けられた感情を判別して、思考の先読みをしたりするらしいです。


 殺気とか敵意で攻撃のタイミングを見計らったりするのに便利って本人はいってますけどぉ、これのせいで私は好きな人ばれちゃったので、ちょっと苦手ですぅ。


「じゃぁ、今からいくぞ。」


「はーい……って、今から?」


 この学園、お嬢様のお屋敷よりずっっっと広いんですよ?それをくまなくあるくって……?


 そりゃ、犯人の目星はついですけど、そいつがどこにいるかわかんないんですよぉ?


「見つかるまでやればいい。放課後もある。こういうのは足で探すのが一番効率がいい。」


 レンジュは真顔でした。あ、意外とアクティブなんですねぇ。てっきりインドアかと思いましたけど。


 ……もしかして私たち、面倒な奴を仲間に引き入れちゃいました?

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