報告書15「千葉駅ダンジョン地下エリア、一面を覆う濁流について」
千葉駅ダンジョンへと向かう相変わらずのトランスポーター、コーギー号車内でチトセによる今回任務のブリーフィングが始まった。
「それじゃ、今回S.O.U.R.CEから斡旋された任務の概要説明を始めるわよ。回収対象資源はサーペントの外殻にテクノロジー、なのでサーペントが多数出没する千葉駅ダンジョン地下、通称ペリチカを活動地域とするわ。任務の依頼主はサカイ・インダストリアル社、いつものようにレアメタルにハイテクノロジーはボーナス対象よ。それと今回は複数社がこの任務を受注してるらしいから、他社に負けないように張り切って行くわよ!」
「千葉駅ダンジョンは2度目だし、まぁ楽勝だろう」
「はぁ〜、これだから初心者は」
俺の言葉に大袈裟にため息を吐き、額に手を当て首を振るチトセ。ふん、どうせ俺はなーんにも知らない初心者ですよ。
「いい?同じ駅ダンジョンと言っても、エリアが違えば様相もガラッと変わるものなのよ。出てくるリソーサーも、構造も、環境までもね。油断していると足元すくわれるわよ」
「へいへい、せいぜい気を付けますよ」
なんて話をしている内に、コーギー号が隔離地域の壁近く、以前駐車したのと同じ場所に到着した。車内から外へ出ると、首筋に水滴が落ちるのを感じた。
「雨……?」
上空を見上げると、丁度降り出し始めた所のようだった。
「これはいかん、予報だと降り出すのは夕方からのはずじゃったんだがな。どうするのじゃチトセ?このまま本降りになると、難易度も上がるぞ」
「ここまで来てやめる訳にはいかないわ。なんせ納期が迫ってるんですから。さっさと行ってちゃっちゃと回収しちゃうわよ!」
そう言いながら多目的ロケットランチャー''クニクズシ''を片手で持ち上げ、背負うチトセ。機動鎧甲のパワーアシストが効いているとは言え、勇ましい事だ。前回同様、イクノさんには車内でのオペレーターをお願いし、俺とチトセは千葉駅ダンジョンへと向かった。
隔壁から隔離地域に入り、高架線沿いに歩く事数分、千葉駅ダンジョンが見えてきた。しかし移動している間も雨は強まる一方だ。こうザーザー降られると堪ったもんじゃないな。早く屋内に入りたい……
「……ん?」
「?どうかした?」
「いや……なんでもない」
気のせいだろうか、雨音に混じって遠くからヘリの音が聞こえたような気がしたが……他の同業者も来ているのだろうか。そんな事を考えながら千葉駅ダンジョン入り口まで向かうが、段々と水溜りが増えてきた。と思っていたら、1階入り口に到着する頃には、地面一帯が水浸しとなっているではないか。
「なんだこの水捌けの悪さは。ここもかつては駅だったんだろ」
「近年の雨量の増加と、リソーサーによる排水設備の損壊が原因ね。こんなので驚いていたら、地下なんて行けないわよ」
それってどういう……いや、何となくだが聞かない方が良さそうだ。
「今回はまず1階に入って、そこから地下を目指すわよ」
チトセの指示通り、西側から崩れた入り口を通って1階に入るが、水が中まで入ってきてやがる。周囲を見渡すと、どうやらかつてこの辺りは食料品を売るエリアだったらしく両側にショーケースや、喫茶店の様相をした店が見えるが今はかつての賑わいは見る影もない。
「フロア中央付近に下へ降りられるエスカレーターがあるはずよ。ほらあんたが前!」
「うおっとと!全く、乱暴だな」
チトセに押され、無理やり前衛にさせられる。床の水はどうやら地下に向かって流れているようだが、この分だと目的地はとんでもない事になっているのでは?そんな心配が頭を過るが、考えても仕方ないのでバシャバシャと水音をさせながら進む事にした。道中、お馴染みのマウスが出てくるので退けつつ進んで行くと、目的の下りエスカレーターらしきものを発見した。らしきものと言うのは、大量の濁流がそこから流れ落ち、もはや川のようになっていたからだ。
「おいおい、本気でここを降りるのか?」
「当然よ。ほらさっさと行った行った」
一段また一段と濁流の中を降りていくが、下に行くにつれ、水位は徐々に上がってきて、地下1階に到着した頃には腰下までの深さになってしまった。
「付いてないわね。雨のせいでいつもより水位が高いわ」
「って、本当にこんな中を進むのかよ」
「なぁに今更驚いてるのよ。言ったでしょ、同じダンジョンでもエリアが違えば環境も全然違うって」
確かに聞いたが、まさかこれ程とは。これじゃあ駅ダンジョンの中と言うよりも、沼地を進むようなものじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます