知りたいな
白い子ネコのユキが家族に加わって、ぼくたちの生活は少しだけ変わった。
まず、リビングには寝床用のネコちぐらが増えた。ついでにぼくのも新しく買い替えてくれて、それぞれ大きく口をあけたネコの顔の形と色をしている。
並べて置いてあると、ネコ型のアパートを建てたみたいで面白いな。
「チュンチュン(おはよう)」
「ニャア(おはよう)」
それから、毎朝ベランダに数羽のスズメが来るようになった。
ぼくは人間とのんびりお茶を楽しむのが好きだけど、ユキはそれ以上に動物たちと触れ合うのが好きだ。
出かけようとするママさんに、仲良しのスズメから聞いた天気の情報を伝えたこともある。
「ニャーン」
「え、カサ? 今日は一日晴れの予報だったけど……」
けれど、ママさんはすぐに「分かった」と納得してくれて、帰り際に折り畳みカサは大活躍した。春の天気は変わりやすいもんね。
それ以来、長田家は小さなお客さんにお米とキレイなお水をふるまっている。
他にも、犬でもウサギでも鳥でも、ユキはすれ違えば挨拶と情報交換をする。
そのうちにぼくも時々混ぜてもらうようになり、世界が広がった。何年生きていても新しい発見ってあるんだね。
ユキは長田家のみんなともうまく付き合っている。
「ユキ―、おいで~」
「ニャア」
ぼくは気が向いた時にしか撫でてもらいに行ったり、オモチャで遊んだりしないけど、ユキはもっと積極的だ。
呼ばれるとスッと動くし、ネコにしてはかなり根気強い。
おフロはちょっと苦手みたいだけどね。あぁ、今日もあっさり連れていかれちゃった。
そして何もない時は大抵ぼくの隣に寄り添っている。
特別、何かを話すわけじゃない。
◇◇◇
「ナオ、字を教えて?」
一緒に暮らすようになって少し経った頃、ユキは突然言ってきた。
確かにユキは
でも、ネコならごく当たり前のことだよね、どうして?
「ナオと同じものを同じように見たいから。字が読めれば、近付けるよね?」
理由が思い付かずに問いかけると、ユキはこう応えた。
そうしてリビングのあの平仮名表をくわえてきて、ぼくの前にポンと置く。その澄んだ青い瞳は「ねぇ、良いでしょ?」と訴えてくる。
……あぁ、そっか。同じなんだ。
ぼくが動物と話す輪に入れてもらってユキの世界を知ったように、ユキもぼくの世界を知りたいんだ。
「だめ?」
「ううん。じゃあ毎日、少しずつね」
「うん」
だって、ぼくたちは家族なんだものね。
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