第11話「電話」
今日から優陽に会わないことにした。
学校に登校している間、いつもは軽い足が今日は少しだけ重く感じた。いつものように彩だけに挨拶をして席に座る。後ろには学校の優陽がいる。優陽と喋る事が出来ないのは少し寂しいが、その分勉強に力を入れようと頑張った。
私が学校から帰る支度をしていると彩が声をかけてきた。
「今日は帰るの遅いん?」
「うん」
「じゃあ一緒帰ろ‼︎いつもはどこの誰だか知らん奴に美海のこと取られてるから寂しいんだよなー」
「どこの誰だか知らん奴って」
私はお腹を抱えて笑った。
「だって知らんもん」
「まあね」
彩は不貞腐れたような顔をしていた。
「まあいいけどね」
「いいんだ」
「だって無理やり聞いても美海が嫌なだけじゃん?」
「ありがとう」
彩は本当にいい子だと思う。この子がずっと友達だったらなと思っている。
二人で喋りながら帰る帰り道。彩がいるからなのか、足が登校している時よりも少し軽くなったように感じる。
バス停で別れ私はバスに乗り、最寄りのバス停までバスに揺られる。
バスから降り、いつもはあまりゆっくり見る事がない海を眺めながら家に帰った。
「ただいま」
「お帰りうみちゃん」
「うん」
「今日は勉強するのかい?」
「そうそう、そらの散歩はもう少ししたら行くね」
「そうかい、後でお茶持って行くからね」
「ありがとう」
二階へ上がり、鞄の中から筆箱と教科書類を出し勉強を始める。一時間だけ勉強してからそらの散歩に行こうとタイマーを一時間にセットする。
一時間が経過し、そらの散歩に行く。帰ってくるとおばあちゃんが夜ご飯を用意してくれていたので、準備を手伝った。お風呂に入り、二階へ戻り勉強を再開する。
夜になるにつれ、海風が部屋に吹き込み風が教科書のページをめくる。
そんな日々が一週間ほど過ぎ、テストまで後一週間となった時。夜、両親から電話がきた。
「うみちゃん、お母さんから電話だよ」
「うん、今行く」
私は急いで一階へ降りる。
「はい」
「あ、美海?」
「うん」
「そう、勉強ちゃんとやってるの?」
「うん」
「後テストまで一週間でしょ?課題終わったの?」
「まだ…」
「あんた……」
またお母さんのお説教が始まる。私は今すぐ電話を切りたかったが、そんな勇気は私にはなかった。ただ頷く事しかできなかった。
「あんた、ちゃんと聞いてるの?」
「聞いてる」
「あんたが寮じゃなくておばあちゃんの家に行きたいって言うから行かせたけど、成績下がってたら、わかってるよね?」
「うん」
「あんたが中学受験も、高校受験も成績が上がらなくて…」
「うるさい!!!」
私はそれ以上の言葉を言って欲しくなくて、思い切り通話を切った。
「うみちゃん?どうしたん?」
私はおばあちゃんを無視して外に飛び出した。
もうすっかり日は暮れ、月が顔を出していた。一心不乱にあの場所に足を動かした。
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