第29話 春を制し次は夏へ
病院の裏の駐車場。そこに凍夜はマスコミを集め取材に応じた。表では
騒がしすぎるからだ。マスコミも病院の前なので静かに順番を
待った。最初は絵里からだ。その絵里から何故倒れたのかを聞かれ
凍夜は転換という病気の事を言った。これは誰でもおこる事で
急に倒れたするのでごまかすためにその病名をつげた。
「じゃぁ今はなんともないんですね」
「ああ。たまに発作がおきるかもしれんが、薬を飲んでれば頻繁に
起きる事はないらしいからな」
「じゃぁ春のセンバツには」
「問題ない。だが、いつ起きるかわらんからな。しばらくは治療に
専念するだろう」
それから他の記者からも色々聞かれたりして、一時間ぐらいで
開放された。その後、凍夜はめぐみ達の待つ家に帰って来た。
「おかえり」
「ただいま。悪い」
「しょうがないよ。でも、ごまかしちゃっていいの?もし本当にそう
なっちゃったら」
「その時はその時だ。それに、マスコミに知り合いがいるしな。いざと
なったらそいつにフォローしてもらうさ」
「あの女子アナね。私はあまりあてにしてほしくはないわ」
「まぁそうならないようにするさ。今はくたばるわけにはいかないからな」
凍夜はめぐみにキスをした。それから数日、凍夜は学校を休み、自宅で
待機していた。その間は子育てを手伝い家族で楽しくしていた。
それから一週間経ち、凍夜が学園に登校してきた。先に早朝の朝練に
来たので遙達が部員全員が凍夜の前に集まった。
「悪かったな心配かけて」
「あの、大丈夫なんですか?急に発作が起きるとか?」
「ああ。でも、それを気にして閉じこもるのもあれだからな。でも
お前らが迷惑だって言うならしばらくは部に来ない事にするがどうする?」
凍夜の言葉に部員達は全員沈黙した。その沈黙を破ったのは一年の
捕手をしている
「迷惑なわけないじゃないですか!僕達は長峰先輩を目標に
ここに来たんです。だから、何があっても僕達はサポートします」
「そ、そうだな」
「ああ。先輩、ここにいてください」
「お願いします」
一年生全員がそう言って、遙達二年生も納得した。黒子と朱音も
手伝うと言い、碧陽野球部は凍夜を中心に一つになった。
校内でも全校集会で凍夜は自分から問題が起こった事を生徒達に
謝罪した。その行動に全校生徒が拍手をし、凍夜を受け入れた。
その拍手に凍夜は初めて人前で笑顔を見せた。
それから、凍夜の所には手紙が殺到するようになった。以前からも
あったが、今ではおそらく全女子生徒が凍夜に手紙や話をかけに
来るようになっていた。なので凍夜は授業が終わる数分前に
教室を出る様にしている、それは教師達からの許可も得ていた。
「じゃぁ先生」
「ああ。一人でいいのか?」
「大丈夫です。部室に行くだけですから」
そう言って、凍夜は三階の教のベランダから下に飛び降りた。
普通なら死ぬかもしれない高さだが、凍夜は平然と飛び降り
地上に下りた。クラスメイトも最初それを見た時は驚いて
いたが、何度も見ているのでもう慣れていた。
先に部室に入り、着替える。着替え終えて部室から出ると
凍夜は声をかけられた。
「あの、長峰凍夜君よね。ちょっと話を聞かせてもらえる
かしら」
「あんたは?」
「私、ニュースキャスターでスポーツを担当している
「あんたもスポーツ担当か。局は違うみたいだが」
「他に知り合いのキャスターがいるんですか?」
「ああ一応な」
凍夜は絵里の事は言わなかった。言ったら何かめんどそうと
思ったからだ。それからグラウンドに行く間に瞳から
色々聞かれそれに応えていた。以前の凍夜なら完全無視を
していただろうが、今の凍夜は普通の学生と同じくらい
心を開いていた。ちなみに瞳はいかにもな大人の感じで
巨乳だった。
練習はいつも通りに行われるが、凍夜は動かず、一年の
指導をしていた。つまりそれは超スパルタだった。
遙達が去年行ったことを一年全員に同じことをさせた。
「こ、これ重いぞ」
「これで、走るのか?」
「まずはそれで普通に動けるようになりな。それができれば
誰よりも力つくぞ」
「そ、そうですけど」
「これ、10キロもあるぞ」
「り、両方で20キロ」
一年生は全員立ち上がる事もできなかった。最初なので
部活以外ではそれを外してもいいと言ったが、一年生達
は自分から率先して重りをつけて動こうとした。
それから一年生達は凍夜の指導のもと、力をつけていき
そうしてついに春のセンバツが始まった。
碧陽は凍夜を温存しながらも勝ち上がる。所所で凍夜は
おさえで出て来て存在をアピールする。凍夜がいなくても
もはや碧陽はこの地区でも、そして全国でも最強クラスに
なっていた。
なので当然、春の甲子園を制覇し、次は春夏の連覇がかかった
大事な夏になった。
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