第19話 甲子園決勝 碧陽対名城。凍夜倒れる!?

甲子園最終日。つまり決勝戦。全国の頂点に立つ学校が決まる。その決勝に残ったのが前回、地区大会一回戦負け、そして、最弱校と呼ばれていた学園。私立碧陽学園

と逆に去年の優勝校で全国一位と言われている愛知代表の名城学園だ。

つまり、最弱対最強の決勝戦と言う漫画の様な展開に甲子園ファンだけじゃなく

そういう事が話題になって見ている人も多く居た。


スタンドは当然満席で、両校の生徒全員プラス、球場の外にまでいる野球ファンが

この試合を見る為に早朝からずっと並んでいた。


テレビもどの局も甲子園で話題が持ち切りだ。それは日本だけでなく世界中で

中継もされている。とくにアメリカなどは凍夜を取りにいけるので全球団の

スカウトが来ていた。

 

その注目の両校がベンチにやってきた。練習の時間になり、先に名城が

始める。相手ベンチにはみなみがいる。兄の東条隼人はファーストを

守っている。打者では4番だ。次に碧陽が練習を始める。それだけで

歓声が甲子園に響く。

凍夜達の練習も終わり、ベンチに戻る。


「さぁいよいよ決勝よ。長峰君、体調は?」

「問題ない。今日は医者もいるから何かあっても大丈夫だ」

「何かあってからじゃ遅いからね。皆、注意しててね」

「ハイ」

「じゃぁいってらっしゃい」


グラウンドに出ていく凍夜達。整列し、そして、サイレンが鳴る。後攻の

碧陽が守備につく。凍夜が決勝のマウンドに上がる。


「まさか、こんな簡単に来るなんてな。ま、難しいよりは楽だから

いいんだがな。さて、始めるか」


審判の合図で試合が始まる。そして、凍夜は振りかぶり、体を捻った。それは

超速球だ。そのスピードがまた記録を更新した。それからは普通の

速球で三者三振に取った。


一回裏では凍夜は一番に戻っている。今日の凍夜は何を狙っているのが

それを予想しているファンが多くなっている。

最初にホームランを打つか、普通のヒットにしてサイクルにするか

一塁に出て足で取るのかと。


その凍夜は右打席に入っていた。いつもは左打席だが凍夜はスイッチも

もうなんでもできるので、客は喜ぶ。

そうして相手が第一球を投げる。その玉はなんとど真ん中に来た。

捕手は外に構えていたが、コントーロールミスで真ん中に来たみたいだ。


そして、凍夜は行動を変えて、それをホームランにし球場をわかせた。しかも

バックスクリーンの上を超える場外にさせた。

ダイアモンドを走り、そしてホームインする。お約束の記録を作った。


それから二回表になり凍夜の次の相手は4番の東条隼人だ。凍夜は一瞬相手

ベンチにいるみなみを見た。するとみなみが笑いながら凍夜を見た。

凍夜もうっすらと笑い返し、すぐに遙のサインを見た。

凍夜が振りかぶり投げた。すると隼人はそれをファールにした。そのスピードは

160を出ているがそれに当てたというだけで、スタンドがわいた。


「さすがに真ん中なら当てるか。ま、前に飛ぶまではいつもと同じだがな」


二球目を投げるがそれも隼人はファールにする。三球目、四球目と続き

ついには七球目まで続いた。最初は歓声を出して応援していたが次第に

球場内は静まり返っていた。二人の勝負をただ見守る様に。


そして、次が十球目になる。ここで遙がタイムをとり凍夜の所にいく。


「おい、大丈夫か?」

「何がだ?」

「体だ。なるべく球数減らしたいのに相手は粘ってきやがる。コースを

つくか超速球にするか」

「そうだな」


凍夜は遙に次投げるのを教え遙を戻らせた。それにテレビでは色々こうする

だろうなどの解説をしている。

そうして凍夜が次に投げたのは、超速球だった。しかも、それをインコースの

低目に投げ、隼人もそれには手が出ず、三振になり、審判が力強くコールすると

スタンドがわいた。


「まさか、あんな低めにコントーロールできるとわ。だが次は打つ」


隼人は悔しそうにベンチに戻った。それから凍夜は他の打者には簡単に

三振を取り、決勝でも完全試合は継続されている。

それから碧陽も遙達も打撃で貢献したりしながら点を取っていき、現在

3対0で碧陽がリードしている。隼人との勝負も凍夜がコースを

ついて三振にしていく。


そして、7回までやってきた所で雨が降って来た。今までも雨での試合は

あったが、今回は少し強めに振っていて、いったん試合は中断になった。


「もしかして没収ですかね」

「どうだろう。このまま雨が続くとなると」

「すぐに止むから準備しろ」

「長峰君?」

「あと五分で止む」


凍夜はそう言って帽子をかぶりベンチを出た。それに気づいた客達が歓声を

出した。それから五分ほどすると本当に雨は止んだ。


「あの子、天気まで操れるのかしら?」

「本当にすごい子ですね」


めぐみと洋子がそう話しをして数十分ほどでグラウンドの整備が終わり

試合が再開された。

凍夜はマウンドの足場を固め、遙と話し合ってから次の玉を投げた。


そして、その玉はなんと変化球のフォークだった。これまでずっと

ストレートだけで来たので誰もが凍夜には変化球はないと思われて

いたが、初めて凍夜は変化球を見せた。しかも、ストレートとほぼ

同じスピードから急速に落ちるフォーク。これだけで高校生では

打つ事ができない。しかも、これからは変化球もあると考えないと

いけないので、打者は揺さぶられる。でも、先ほどのフォークは

ボールになり、ストライクには入っていない。


でもそれは凍夜がわざと外したのだ。ストライクにするとストレート

だけの記録がなくなるのでこの変化球はわざと見せただけだった。


そうして相手に変化球を意識させて簡単に凍夜はまた三振を気づきあげて

いき、そして、最終回の守備で、あと一人の所まで来るとスタンドから

そのコールが鳴り響く。

その最後の打者の相手は隼人だった。


ここまで凍夜は全ての試合を完全試合にし、しかもストレートだけ

さらに、世界新記録も出したりとして、これが最後の打者となると

ファン達はまだ見て見たいとも思っていたが。それは打者の隼人が

現実にさせる。


凍夜も手は抜いてはないが、隼人はまた当てて来て、今回もすでに

十球まで打席は続いた。


スタンドは両校の応援がヒートアップする。おそらく甲子園史上最大の

盛り上がりで、最大の見せ場になっている。

凍夜も投げ続けて次がなんと二十球まで続いた。遙がマウンドに行こうと

すると凍夜はそれを止める。凍夜はもうこの試合だけで100球以上

投げている。三振を取るということはそれだけ球数が多くなる、しかも、

隼人の打席でさらに多くなるのでさすがの凍夜も汗をかきはじめた。


「めんどくさくなってきたな。しかたない。次で決めるか」


と、凍夜は遙に人差し指をさして、超速球を投げるサインを出した。

遙もそれしかないと思い承諾し、サインを出す。


そして、凍夜は振りかぶり体を捻り、スタンドからはいっせいにトルネード

だと声が出る。

これで決まると誰もが思った瞬間。そのボールは遙いや審判の上を

通り、後ろのフェンスにまで行く暴投になった。こんな玉を投げる凍夜を

見るのは誰もが初めてだった。


さらに、遙が前を見るとなんと凍夜が倒れていた。

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