第17話 場外乱闘は女の戦い!?試合ではまた記録を達成する凍夜

ホテルのロビー。そこは今凍夜が会見を開いていた。まずはケガの具合などを

報告する。ちゃんと診断書も見せて試合に出れるという事を証明して

その後に相手に対する事などを聞かれたりした。そこでは一応普通な

感じで対応した凍夜だった。


会見は数時間続いて、昼過ぎに凍夜は開放された。次の試合までは

三日後なので充分休める。


夜、凍夜は公園にやってきていた。そこにはやっぱり名城のマネージャー

東条みなみが自販機の前にいた。向こうはまだ凍夜に気づいてないので

わざと後ろから声をかけた。


「また飲まれたのか?

「キャッ!あ!?あんた動いて大丈夫なの?」

「大丈夫だからここにいるんだがな」

「よかった。昨日の試合見てびっくりしたから。知り合ったばかりの人が

何かあったらって思うと」

「敵なのに心配するのか?」

「当然でしょ。敵の前に知り合いだし、それに私は野球してる人は尊敬

しているわ。ま、あいつらはその野球を汚したから許せないけど」

「あいつらは勝つ為にやってるからな。それも作戦だろ。ぶつけたのは

おそらく偶然だ」

「そうだけど、それ以外は明らかに悪意があったじゃない。そんなのが

甲子園に来ていいわけないわ」

「そう怒るな。そいつらは出場停止になったんだからよ」

「そうだね。それで、本当に大丈夫なの?」

「問題ない」


二人はベンチで座りながら話していた。ここはホテルから歩いて来れるので

その通りには他の野球部が通ったりするが、凍夜達が座っている所は

公園に入らないとあまり見えないのだが、そこに凍夜を呼ぶ声が聞こえた。


「凍夜君!?」

「先輩!何してんですかこんな時間に」

「それはこっちのセリフよ!安静にしてないとダメでしょ」

「暇だったからな。それにただ散歩してただけだ。なんの心配もない」

「散歩?デートじゃなく?」

「デート?誰とだ?」

「そこにいる子よ」


めぐみはみなみに指をさして声をあげた。


「あら、あなた彼の部のマネージャーをしている子よね」

「そうだけど、あなたは?」

「私は名城野球部マネージャーの東条みなみです。よろしくね先輩」

「先輩?じゃぁあなた一年なの?」

「そうです。彼とはここで知り合ったんですよ」

「おい」


みなみがわざと凍夜の腕にくっついた。


「私は篠塚めぐみ二年よ。それで、この人の恋人よ」


今度はめぐみが反対の腕にくっついた。


「恋人なんですか!?マネージャーが部員とつきあっちゃうんですか?」

「あなただってそうしてるんじゃないの?」

「私はしません。でも、彼なら別ですけど。私は野球をしている人を尊敬

してます。中でも彼は私の一番です。なのでください」

「あげるわけないでしょう。あなたも敵のチームと仲良くしないの」

「仲良くしてるわけじゃないんだがな。それよりどいてくれ。動けん」


二人は一度凍夜から離れるが、近くにはいて、互いににらみあう。


「凍夜君、戻るわよ。聞きたいことがいっぱいあるし」

「じゃぁ私も戻りますね。部屋まで送ってくれないと・う・や君」


みなみはまたわざとめぐみの前で凍夜を名前で呼んだ。


同じホテルなので結局三人で戻り、ロビーでみなみと別れた。それから

ミーティングをしているさいにめぐみは名城を倒すと意気込んでいた。

優勝校だからかと部員達は思っているが、それがただの恋敵を倒す

と言う事だけで気合が入っていた。


その名城が翌日の第一試合で登場し、めぐみ達はスタンドで偵察をした。

優勝校で、三年は注目選手もいるので名城は簡単に勝利した。


そんな感じで相手校で偵察しながら次の対戦相手も見て行った。


そうして碧陽が試合をする日がやってきた。高校では異例の碧陽監督の

洋子が先に会見を開き、凍夜を先発させると発表した。その事もあり

球場は外まで大勢の客であふれかえっていた。


練習の時も歓声が響く。凍夜が無事だった事にプロの関係者なども

安心していた。それはファンも同じで、スタンドでは凍夜の応援幕など

がそこら中に広がっていた。会見での凍夜は普通の人よりは暗い

感じで対応していたが、女子達の間ではそれがクールでいいとさらに

評価があがっていたので、スタンドからは黄色い声援が多かった。


三試合目という事もあり、凍夜以外の部員達も落ち着いて練習できていた。

今回の捕手が遙ではなく初出場の健司だが、落ち着いていた。それも

凍夜がいたからだ。そうしてサイレンがなり、試合が開始された。


今回はまともで相手も一番の凍夜に勝負を挑んでいてそれだけで拍手が

起こっている。その一打席目で凍夜はヒットを打ち、三塁まで進んだ。

そからはセオリー通りの攻撃で碧陽が先制点を取り、盛り上がる。

守備でも凍夜がマウンドに上がり投げる。超速球ではないが普通に

160を出しまくり、三者三振にする。


攻撃では凍夜は二打席目で二塁打をうち、そこからまた点を取る。さらに

次の打席ではわざと簡単なヒットを打ち、一塁で止まった。今までにない

攻め方だが、気づく人は気づいていた。


そう、凍夜は三打席とも違うヒットにしていてあと一つホームランを

打てばサイクル安打が達成する。凍夜は最初からそれを狙っていた。


そして、それを達成させる為に他の部員も続き、凍夜の四打席目が

回って来た。そこで当然、客達からはホームランのコールが鳴り響く。

相手は凍夜にだけは敬遠できない中、勝負を挑んだ。

その玉は普通なら打てないぐらいのインコース低めに来たがそれが

わかっていれば打ち返せるのが凍夜だった。救い上げる様に打ちその

玉はどんどん上がっていき、センターが追いかけるが、その玉は

バックスクリーンの一番上にまで当たりホームランになった。


そして凍夜はまた甲子園で記録を作った。

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