第13話 女子アナと知り合う凍夜

翌日、凍夜は朝練に来た。すると、部員達から先に話しかけられた。


「甲子園?」

「ああ。昨日お前が甲子園に来たってニュースでやってたぞ」

「本当に行ったのか?」

「行った。暇だったからな。見に行ってみた」

「どうだった甲子園は」

「まぁさすがだな。やかましさは世界一だなあれは」

「確かにあの球団のファンってすげぇもんな」

「ああ。プロならやっぱりあの球団に入りたいよな」


そんな話をしていると監督とめぐみがやってきて、凍夜にあの話をする

様に言った。いつもは洋子がいる場所に凍夜が立つ。そして、話しだす。

話を聞いた部員達は当然衝撃を受ける。今まで凍夜を嫌っていた者達も

同情するほどだ。

部員達は全員沈黙をする中、キャプテンの清貴が凍夜に聞く。


「お前、マウンドで死ぬつもりか?」


その言葉に全員が凍夜に注目した。


「それができるならそうしてみたいな。でも、それをしたらお前らにも

迷惑かけるからな。だったら病室でひっそりと死んでるさ」

「アホ!死ぬなんて簡単に言うんじゃね!お前はもう俺らの一員、そして

エースなんだ!エースが簡単に死なれたら困るんだよ」

「キャプテン」

「いいかお前ら。これから全員で長峰をサポートするぞ。何かあったら

全力で助ける。こんな俺達をあの甲子園に連れてってくれたのはこいつの

おかげだ。絶対長峰を死なせないぞ」

「おぉぉぉぉ」


他の部員達もその気になるが。


「死なせないって言われても余命はあるんだがなって痛てぇな」

「そういう事言わないの。皆あなたの為に言ってるんだからね」


めぐみが突っ込みながら凍夜に言う。それから普通に練習に戻り

凍夜はベンチで座らされた。もう十分なチート級の力を持って

いるので凍夜には練習させないように清貴達が監督に言った。


「暇なんだが」

「だったら皆に指導してみたら?」

「俺がしたら先にあいつらが死ぬぞ」

「それもそうね」


めぐみはすぐに諦めた。練習後、凍夜は取材陣に呼び止められた。その

取材を先陣切手出て来たのはとある局の女子アナだった。


「あの、私スポーツを担当してます天音絵里あまねえり

言います。昨日、甲子園に居たという情報があるんですけど」

「ああ居たぞ。普通にただ見に行っただけだがな」

「どうでしたか?もうすぐあの舞台に立つ気持ちは」

「ま、いつもと変わらんさ。俺は緊張なんてしなんでね」

「そうなんですか。あと、あの球速はどうやって身につけた

んですか?」

「ひたすら鍛えただけだ。スポーツやる奴らはそれにあった

運動、鍛え方をしないから限界を超えれないんだよ」

「じゃぁあなたは体中を鍛えたからあれだけの玉を?」

「それだけじゃないがな。質問はここまでだ。腹減ったんでね

帰らせてもらう」

「あ、あの、また取材させてください。独占で」


その言葉に他のマスコミがやじるが、凍夜は以外な返事をした。


「いいぜ。ただ、俺は安くないんでね」

「お、お金ですか?それなら出演料で」

「それもいいが、俺は飯の方がありがたいんでね」

「わ、わかりました。じゃぁ取材する時は食事でも」

「それで手をうってやる。だが、気がのらない時はしないからな」


凍夜はそう言っているが、食事をおごってもらう事が優先なので

おそらく受けるだろう。そうして数日が経ち、夏の高校野球

まであと二日に迫っていた。その間になんどか甲子園に行き

開会式の練習に参加したりしていた。なので今凍夜達はホテルで

ミーティングをしている。


「明日一日、ゆっくりしたらいよいよ本番よ。私達は初日、しかも

一回戦からになったわ。それでいて、長峰君のおかげで私達は今

全国で一番注目されてるわ。そんな中で緊張するなって言う方が

無理だけど。でも、長峰君を助ける為にも守備は大事だからね」

「ハイ」

「俺は助けられなくても勝てるんだけどな」

「そういう事言うな!お前は黙って俺達に助けられてればいいんだよ」

「逆に不安なんだがな」


清貴達に言われてツッコむ凍夜。すると、凍夜の電話が鳴りそれに

出るとかけてきたのはあの女子アナの絵里だった。食事ついでに

取材したいというので凍夜は部屋を出て絵里にいるレストランに

向かった。


店の中に入ると絵里が手を振っていた。


「それ変装?」

「ああ。外に出るなら変装しなって監督が言うんでね」


凍夜は制服だが、帽子とサングラスをかけていた。


「それにしてもいかにも高級そうな店だな」

「あなたに取材するんだからこれぐらいはって思ってね。ま、私の

給料じゃ一回しか来れないけど」

「アナウンサーは安いのか?」

「ま、ピンキリね。私はまだ三年目だからね。でも、あなたを独占で

取材できるって言ったら褒められたわ。本当にありがと」

「ただの気まぐれだ。あんたの運が良かっただけだ」

「それでもいいわ。じゃぁ先に食べましょうか」

「その前に、俺に食べさすならもっと普通のファミレスとかに

するんだな。俺はまだガキだぞ」

「そ、そうね。じゃぁ次はそうするわ」


そうして凍夜は初めて高級な店の食事をしたが、やはりあまり

好きにはなれなかった。なので、絵里の話だけを聞いた。


ホテルに戻るとロビーでめぐみが待っていた。


「どうしたんだ先輩」

「ねぇ凍夜君の取材している人って女の人?」

「ああそうだが」

「まぁ凍夜君に限ってそれはないと思うけど、あまり私以外の

女の人とは仲良くならないでほしいな」

「別に仲良くはなってないがな。飯をおごってもらうだけだしな」

「わかってるんだけどね。でも、少しは私の事も考えてね」

「わかった」


凍夜は本当はよくはわかってなかったが返事はしておいた。

そうして翌日は全員休息を取り、疲れを取る。

そして、いよいよ高校野球の頂点を決める大舞台、甲子園が

始まる当日になった。

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