第10話 凍夜倒れる!?事実上の決勝戦決着!
凍夜と光一の打席は十一球目に入った。プロでもたまに数十球打席が続く事が
あるがその時は盛り上がるのだが、今、球場は静まり返っている。
二人の真剣勝負がそうさせていた。しかも、これは地区大会でまだ一回戦
しかも二回という序盤だ。
そんな中、凍夜は少し疲れて来ていた。
(まずいな。へんな感覚になってやがる。さっさと終わらせるか)
凍夜は今まで普通の速球を投げていたが、あと一球でアウトなので
凍夜は遙のサインを無視して投げようとしていた。
「おい!」
「あれはトルネードだ」
凍夜は体を捻り、そして、超速球を投げた。光一は一瞬戸惑ったが、これが
来る事も予想していたのでその玉に合わせて振って来た。
「当たる!」
「何!?」
光一は超速球を当てた。遙はそれに驚いた。そのバットに当たったボールは
高く上がり、凍夜の前まで上がり、そのボールを取りアウトを取った。
そこでまた会場はわいた。光一は悔しがり、ベンチに戻る。凍夜達も
ベンチに戻るが、遙はまた凍夜が超速球を使ったの事に怒ろうと
したが、凍夜の様子がおかしかった。
「おい、長峰!お前また!?」
「悪いが説教は後にしてくれ」
「!?お前、なんだその汗」
遙の声に部員達が全員凍夜に注目し、監督も凍夜に声をかけた。
「長峰君、まさか今の勝負で」
「問題ない。悪いがちょっと離れる。すぐに戻るから誰も来るな」
凍夜はベンチを離れ控室の方に行った。控室に入る前に凍夜は座り込んだ。
「これで終わりか?それでもいいが、こんなんじゃハンパすぎだな」
息を切らしながら凍夜は倒れそうになった。すると、誰かが凍夜をささえた。
「……先輩」
「まったく、やっぱり苦しかったんだね」
「来るなって言ったのに」
「私ならいいでしょ。どうするの?あなたが投げれないとなるとうちは
誰も投げれないから棄権に」
「大丈夫だ。この後も投げる」
「そんな状態で投げれるの?」
「心配ない。発作はすぐにおさまる。それまで待てばいい」
「いつもと同じとは限らないでしょ。あんな緊張感の中で投げてたら」
「俺に緊張はない」
「それは違うわ。絶対体が訴えてるわ。だから今発作が起きてるんでしょ」
そんな話をしているとそこに遙がやってきた。
「お前、発作が!」
「もうおさまった。すぐに戻る」
「ダメ!……遙君、監督に棄権を!?」
「勝手に決めるな。本当にもう大丈夫だ」
「おさまったってまたすぐにおきたら」
「その時は俺を棺桶に入れるんだな。今は止めるな」
凍夜は立ち上がり、ベンチに戻った。めぐみと遙もしかたなくベンチに
戻る。碧陽の攻撃が終わっていて守備になっていた。遙はすぐに
防具をつけて、グラウンドに出る。凍夜はしれっとマウンドにいた。
「めぐみちゃん、あの子は?」
「……大丈夫です。さすがに疲れたみたいですけど、もう大丈夫です」
「あの子が疲れ」
「監督、もし、また疲れてたらすぐに代えてください」
「めぐみちゃん?」
「事情はいつか話します。だから今は凍夜君を信じてください」
「わかったわ」
心配そうに見守るめぐみ。その凍夜はまだ汗は書いているが息は落ち着いて
いてそのまま振りかぶった。
そうしてどんどん試合は進みついに最終回になり、凍夜の二点目以降は
入らず、風花も凍夜が光一を抑えていて、やはりここまでパーフェクト
で抑えこんでいた。
その最終回、凍夜がそのままマウンドに行き、続投する。そして
ラストバッターにまた光一が入り、球場が最後の盛り上がりを見せる。
「絶対打つ。勝負だ長峰」
打席に入る前に光一が凍夜に叫ぶ。凍夜は返事をせず、遙のサインを待つ。
そのサインが来て、凍夜は振りかぶる。超速球ではないがコースを
ついて光一を追い込む。
最後の一球になり、碧陽の応援団が今日一番の盛り上げを見せる。
そうして最後の一球を凍夜が投げた。光一は本気でバッドを振り
ボールに当てた。しかし、そのボールは飛ばず、また凍夜が手を
上げ、しっかりと取り、アウトにした。
試合が終了し、事実上の決勝戦は万年一回戦負けの碧陽が地区最強
甲子園常連校の風花を倒し、二回戦に進んだ。
その事はすぐにニュースになり、凍夜がまた完全試合をし、さらに
野球界から注目をされるようになった。
その凍夜は病院にいた。一応検査を受けていたのだ。病室で早苗に
診断を聞かされた。
「本当に危なかったわね。もし、そのまま発作が続いていたらあなたは」
「わかってる。だが、今はまだくたばるわけにはいかん」
「あら?今までだったらそこで死んでもいいって言ってたのに」
「まぁそうだな。ちょっとやる事ができたんでな」
「へぇやる事って?」
「それは秘密だ。ま、すぐに達成はできるだろうがな。俺の体がもてばな」
「その為にはしっかり休まないとね」
「わかってるよ」
「ずいぶん素直になったわね。やっぱり部活やってよかったのかしら」
「素直じゃない、ま、尖ってもないがな」
今までの凍夜は全てを否定し、自分も否定していたが、今ではそこまで
否定はしない。それもやはりめぐみの存在が大きいかもしれない。普段は
普通に接しているが、それでも少しづつ気になりだしていた。今回
倒れそうになった時にめぐみにささえられている時に安心感を感じて
いたのだった。
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