第6話 凍夜部活に復活!そして抽選会へ

翌朝、凍夜は病院に居た。特に発作が起きたわけでもないが、この日は学校も休む

事を伝えているので一日ここで過ごす事にした。

それはなぜか、今日の新聞、しかも全国で記載されていてかつ、テレビでも

大々的に凍夜の事が紹介されたのだ。


超高校級の投手が現れたという事で、今、プロの世界でも凍夜の話題一色だった。

なので、学園には昨日よりさらにマスコミが多く集まり、学園が大変な事に

なったのだ。だから昨日の夜からここにきて、凍夜はしばらくまたここに泊まる

事にした。


「めんどくさい事になったな」

「でも、それだけあなたがすごい事をやり遂げたって事よ」


部屋にやってきた早苗と話している。


「ただボールを投げただけだがな」

「それがすごいんでしょ。しかも、人類最速記録なんて」

「人間なんてしょぼいさ。マシンに投げさせれば200は出る」

「人と機械は違うわよ。直に喜んだら?」

「俺がうれしそうにするとでも?俺は感情なんかない。そんなものがあったら

死ぬ事ができなくなる」

「できなくてもいいのよ。あなたは」

「さっさと仕事に戻れ。今日は誰とも話さん」

「あなたの氷ついた心を解かしてくれる人はいないのかしら」

「いたら会ってみたいな。まぁこの世にはいないだろうがな」


早苗が部屋を出てから凍夜はずっとベッドに横たわっている。たまに窓の

外を見たりするが、テレビもつけずにただ、横たわっていた。

気づけば夕方を過ぎていた。気づかないうちに寝ていたようだ。

テーブルには早苗からの差し入れがあった。

それを食べている時、電話がなった。かかってきたのはマネージャの

めぐみだった。


凍夜は電話に出て今の状況を話した。すると、めぐみがここに来ると

言ったので、しかたなく早苗にも伝えた。


それから一時間後、めぐみが病室にやってきた。


「長峰君!本当に居た」

「あたりまえだ。教えたところに居ないとただのアホだろ」

「そ、そうだけど。だって、病院にいるなんて普通だった病気かなって

思うから」

「普通だったらか。俺は普通じゃないから当たり前の事を考えない方が

いいぞ」

「まぁあんな事できるのは普通じゃないけどね」

「……学園はどうなった」

「大変だったはよ。私もそうだし、部員皆取材されてたり、他の生徒も

聞かれてたり、全校集会で校長があなたの事を話して、一日中あなたの

事で盛り上がってたわ」

「本当に迷惑だ」

「ねぇどうしてそこまで嫌うの?普通スポーツやってる人ならだれでもプロを

目指したりしてるはずでしょ。まぁ学生までっていう人もいるけど」

「俺も同じだ。いや、正確には学生までしかできんからな」

「どうして?親の仕事をするとか?」

「……あんたには話しておかないとしつこく聞かれそうだからな。しかたない!

教えてやるが、知って後悔するなよ」


凍夜は初めて自分の過去を誰かに話した。その話を聞いてめぐみはやはり

泣いてしまった。


「どうするまだ聞くか?」

「もういいわ。ごめんなさい。むやみに聞くのはよくないわね」

「そういう事だ。それからこの事は誰にも言うな。監督に言ったら絶対

出れなくなるからな」

「そうね。でも、知ったからには私はあなたを心配するわ。何かあったら

私がサポートします。あなたを絶対に死なせはしないわ」

「それは無理だな」


それからめぐみは病室を出て帰った。凍夜は少し考えた。自分の話で

泣くなんてと。それに、どうしてマネジャーとはいえ彼女のに自分の

話をしたのかはわからなかった。


それから数日後、学園の方もマスコミなどは落ち着いてきて、遙達は

放課後の練習をしていた。


「監督、あいつはまだ来ないんですか?もうすぐ地区大会の抽選が

ありますよ」

「まぁ最悪、大会当日に来るかもしれないわね」


そう話しているとその本人が現れて周りが騒然とした。


「来たぞ!長峰だ」

「あいつが超高校級の怪物」


周りが騒ぐなか、凍夜は気にせず監督の所に行った。


「悪かったな無理に休んで」

「しかたないわ。でも、普段はどうしてたの?当然、ああいうマスコミって

家まで調べて行きそうなんだけど」

「ああ、家には帰ってないからな。ある所にいた」

「ある所?」

「まぁそれはどうでもいいさ。そんで、何か変わった事はあるか?」

「そうね。あなたの事が知れてからうちに練習試合の申し込みが殺到

してね。それが海外からも来てたりとかね」

「どうやってここに来るんだ。ただの練習試合で」

「ま、それだけあなたに価値があるから来たいでしょうね。何せ世界最速を

出しちゃったんだから」

「あんな事でこの騒ぎか」


洋子と話している間もカメラは凍夜に向かれている。凍夜は捕手二人の

所に行った。


「久しぶりだな長峰」

「ああ。ちゃんと練習してたか?」

「当たり前だ。ま、取材で大変だったけどな」

「取材?」

「そう。俺と三島先輩はお前の超速球を取ってるからな。部員の中じゃ

一番聞かれるんだよ」

「先輩もか?」

「ああ、びっくりだよ。数か月前までは凡人以下みたな俺だったのに

今じゃテレビにも出ちまってさ。ま、実力はこいつより下だからそっちは

あまり評価はよくないけどな」

「まぁうちらはあれだけど、長峰はもうスカウト達の争奪戦に入ってる

からな。しかも、メジャーも」

「メジャー?」

「ああ、いくつかのメジャーの球団の人が監督に話に来ててな。だから

お前は今、世界中の野球界の注目人だぞ」

「そんな事には興味はない」


そんな話をしながら遙とキャッチボールをすると、それだけでカメラマン達が

より近くで撮ろうと陣取りをしている。

凍夜は久しぶりに投げていて、ただ練習してるだけじゃ物足りなくなり

洋子に話した。


「やってもいいの?」

「ああ。最近動いてなかったんでね。少し動いてたんだ」

「まぁ外には出れなかっただろうしね。いいわ。でも、それでまた明日

騒がれるわよ」

「心配ない。俺は何も気にしないからな」

「わかったわ。皆、集合」


洋子は遙達を集めて、例の練習をすると言った。おそらくマスコミ達は

それを待っているので、始めたら騒ぐかもしれないが、それは気に

せず、練習する事と話した。


凍夜がグラウンドに行くと周りが騒ぎ出す。マスコミだけじゃなく、他の

生徒も大勢見に来ている。そこには先生達もいて、今や学園の名物

みたいになっていった。

そうしてその練習が始まり、凍夜の超速球がテレビに流れた。


練習が終わり、部員達が更衣室に行こうとしている所にマスコミ達も

向かい凍夜に取材をしようとするがその本人はもうすでにいなかった。


「あ、あの、彼は?」

「もう帰りましたよ」

「え!?い、いつ?」

「あいつ忍者なんですよ」

「忍者?」


凍夜は誰にも気づかれずに帰る事ができる。それは何故か、能力漫画の様に

屋上まで飛んだりする事ができる。いっきにではないが、べランドを

使って飛んでいる。


そんな風に帰れば誰にも見つからないのは当然だ。なので凍夜は誰にも

会わずに病室に戻って来た。


そんな感じで学園には登校する様になるが、校内にもマスコミが来る

様になり、碧陽学園は創設始まって以来の事に先生達は喜んでいた。


そうして夏になり、いよいよ地区大会の抽選会が行わる当日になり、凍夜達

碧陽野球部は抽選会場にやってきた。そこにはいまだかつてないほどの

マスコミ達が来ていて当然、全員が凍夜に注目していて、その凍夜のいる

碧陽がどこと当たるのかも注目されていた。


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