第4話 長峰凍夜VS佐藤光一

グラウンドに凍夜が現れ部員や監督達が集まってくる。


「長峰君、大丈夫なの?」

「何がだ?」

「何がって昨日はあんなに」

「なんともない。初めての経験で変な体感をしたせいだ。もうなれた」

「それならいいんだけど、もし何かあってからじゃ遅いからね。皆も体調には

気を付けるように」

「ハイ」


皆また散って元の練習に戻る。凍夜は健司に言われて捕球の練習に

つきあう事にした。


「だいぶとれるようになれましたね先輩」

「ああ。まだめっちゃ痛いがな。でも、本格的に鍛え始めたからなんとか

なってるよ。やっぱり俺も甲子園には行ってみたいからな」

「甲子園ね」

「お前は興味ないか?」

「なくはないな。俺が唯一やろうと思ったスポーツだからな」

「そうか。なら行こうぜ。そんで、あの土に俺も立ちたい」


健司や他の高校生の野球をしている者達全員が夢に見る甲子園。凍夜は今はまだ

何も考えないでただ野球をしていた。


そんな中で休日は練習試合をしたりしていて、そのたびに凍夜は完全試合を

する。そんな事をしていれば当然、強豪校からの誘いもあり、洋子の所に

この地区で最強と言われる、甲子園常連の風花学園ふうかがくえんから

練習試合をしたいと言われ、洋子は当然承諾した。


その事が放課後の部活で凍夜達に告げられた。


「風花学園!?甲子園常連校がうちと」

「ええ。これも長峰君効果ね。すごい投手が一人いるだけでどこの

学校も戦いたくなるものよ」

「でも監督、長峰ばかり投げさせると他の奴らは何もできなく

なりますよ」

「そうね。でも、打者の時はできるでしょ。文句を言いたいならまずは

打席でもいいから結果を出しなさい。元々最弱とは言え、皆ももう

真剣に練習してるんだから。結果を出せたら話は聞いてあげるわ」


洋子の言う事はもっともだった。凍夜以外の部員は真面目にはなったが

元からやる気がなく、サボっていたのでその差は当然出てくる。

凍夜と同じ一年生達も遙以外は普通ぐらいだが、昼休みの時に

凍夜が遙達を指導して鍛えていた。遙がどうせなら一年全員でスタメンを

勝ち取って甲子園に出ようと言っていたからだ。


風花との試合は三日後の日曜日。なので凍夜は遙達に連れられて

バッティングセンターに来ていた。


「長峰君はやらないの?」


一緒についてきたマネージャーのめぐみが凍夜の話しかける。


「無駄に金を使うだけだ」

「無駄じゃないんだけどな。君以外の人には」

「俺には無駄だ」


そうして一時間程いてから店を出ようとした時、他の客がやってきた。


「どれを打つ?」

「一番早い奴でいいだろ」

「俺達なら当然だな」


三人のいかにもなガタイをした人達がやってきた。その姿にめぐみは

気づいた。


「あ、風花の選手」

「風花!?」


遙達一年生が驚いてるのに彼らも気づきこっちにやってきた。


「俺達に何かようかい?」

「ごめんなさい。次に大戦する相手なので」

「次に大戦?もしかして碧陽っていう最弱校の」

「まぁ否定はしません。私達が碧陽野球部です」

「可愛いマネジャーがいるのか。うらやましいな」

「俺らもいるだろうが」

「そうだな。それで、そっちに確か怪物がいるんだよな」

「怪物?ああ、彼の事ですか」


めぐみは凍夜に指をさした。


「へぇお前が完全試合を続けてる投手か。名前は?」

「教える必要はない。試合の時のメンバー表を見るんだな」

「言ってくれる。確かに体格は俺達に近いが、一年で俺達に勝てると

思うなよ」

「悪いが勝ち負けに興味はない。ま、俺が負ける事は絶対に

ないがな」

「その自信打ち砕いてやるから楽しみにまってるんだな」

「待ってねぇよ」


凍夜は先に店を出た。遙達も店を出る。


「先輩、あいつらが甲子園に行ってるのか?」

「そうよ。あれだけの体格ぐらいした人達が甲子園に行けるの。彼れも他の選手は

皆甲子園に行くために寝る間もおしんで練習してるわ」

「そうか」


凍夜は何か考えながら家に帰った。そうして翌日、凍夜達は風花学園に向かった。

学園つくと遙達は驚いていた。まるで新設みたいな校舎に広いグラウンド全部が

碧陽とは違った。


「すげぇ校舎」

「これが甲子園常連校か」

「皆、これぐらいで驚いてたら甲子園に行けないよ。常に平常心でね」

「ハイ」


洋子が先導してグラウンドに向かう。その間に風花の生徒達が凍夜達を見て

笑っている。碧陽もある意味有名で弱小の方での意味なので笑われてる。


グラウンドにつくとそこは市民球場なみに色々そろっていた。そこにはすでに

風花の部員達が練習していた。

洋子達は入り口で整列をしあいさつをした。向こうも気づきあいさつをする。


すると向こうのマネージャーらしき女の子がやってきて、ベンチや更衣室を

案内してくれた。全員着替えて、ベンチで待機する。

洋子は向こうの監督にあいさつしに行く。


「初めまして碧陽の監督の白藤洋子です」

「風花野球部の監督、星川茂ですよろしく」


相手の監督は思ってたより若く、眼鏡をかけていていかにも知的な感じを

していた。洋子はメンバー表を交換し、ベンチに戻る。

茂もベンチに戻りメンバー表を確認した。


「これが噂の一年投手か。しかも一番を打つとは。規格外の選手と

いう事だな」


凍夜はすでにこの地区では有名になっていた。だからどこからも警戒されて

いた。その、凍夜は何も気にせず、遙とキャッチボールをしていた。


「長峰、さすがにこの相手にまっすぐだけだと厳しくないか?」

「どうだろうな。投げて見んとわからん」

「そうだが、どんなに早くてもまっすぐってわかってれば強豪校なら

慣れて打ってくる。だから変化球を混ぜたいが、長峰って変化球は使えるのか?」

「俺ができないものはない」

「だろうな。ま、打たれるまではいつも通りだな」


今日は最初から遙がマスクをかぶる事になっている。練習試合をしてきて

洋子は碧陽のスタメンを固定できるようになった。


凍夜達も練習をし、それから時間にいよいよこの地区最強の風花学園との

試合が始まる。


今日は日曜なのでギャラリーが多く、他校が偵察に来ている。しかも、どこかの

マスコミもいたりして他の所とは違う雰囲気になっていた。

両行整列しあいさつをする。

先行は風花なので凍夜はマウンドに行く。相手の一番はバッティングセンターで

からんできた奴の一人だ。


「さぁ見せてもらうぜあいつの玉を」


審判が合図し試合が始まる。遙はミットは真ん中に構え、凍夜が振りかぶって

第一休を投げた。そして、その玉は一瞬でミットに吸い込まれ衝撃音がグランドに

こだました。その速さに風花の部員達も驚く。審判も驚いていたので

コールが遅れた。


それから凍夜は一番を三振にした。相手はまったく動けないでいた。続く二番と

三番も三振をさせた。全部まっすぐでど真ん中だ。ここではスピードも計れる

のでその速さが表示されていて、毎回凍夜は160を出していた。


後攻の碧陽の番になり、凍夜が打席に立つ。そして、初球を簡単に打って

ホームランにした。これで凍夜は最初の試合から全て初球ホームランを

達成している。


凍夜以外は打てないと思っていたが、凍夜のホームランで相手は動揺して

他のメンバーもヒットを出していた。

それでも追加点は取れず交代した。


そうして凍夜はあの三人全員も三振にし、風花相手に9回まで完全試合を

していた。風花達は動揺を隠せず、もう諦めかけていた。


「次が最後か。まさか、本当に怪物だったとわな。完敗だ」


風花監督の茂も諦めていたがその監督に声をかける選手がいた。


「監督、次代打で出させてもらっていいですか?」

「何?ま、もう勝敗は決まっているからな。好きにしろ」

「ありがとうございます。じゃぁ一点取ってきます」

「!?」


そう言った選手はネクストサークルに向かった。その選手の前のバッターが

三振に倒れ、あと一人になり、茂は代々を告げた。

代打で出て来たのは一年の佐藤光一さとうこういちと言う選手だ。


彼は打席に立ち、凍夜を見る。そして、凍夜が振りかぶって投げた。

すると、光一はその玉を打ったが、ファールになった。


「あ、当てた!?」


洋子達もそして、グラウンドに居る全員が驚いた。凍夜も少し驚いたが

普通に投げる。光一は凍夜の160を簡単にカットする。

たまらず遙がタイムを取り凍夜の所に向かった。

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