ラストボール!余命三年のエースはマウンドに生きた証を残す
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第1話 長峰凍夜いきなりエースになる!
「結論から言うわね。あなたの余命はあと三年よ」
「……そうか」
医者から言われた言葉は少年の希望を奪った。元々生きる気力はなかったがそれでも
少しは希望があるかもしれないと思ったが、その希望もついえてしまった。
彼の名前は
とある施設に拾われそこで暮らしてきたが、ある時、発作が起き、倒れてしまい
病院に運ばれた。その病気は何なのかは不明だが、精神的なものだと思われ
凍夜は入院をする事になった。
それからずっと入院生活が続き、凍夜が10歳ぐらいになった時に施設の
人から自分の過去を聞かされ凍夜は人を信じなくなり、不良みたいな
感じなった。病院からも抜けだしたりするが、いくど倒れてしまい凍夜は
ついに病室でおとなしくする事にした。
その間も何度も死のうとしたが、死にきれず自分の弱さを克服する為に毎日
鍛える事にした。そうしているうちに中学三年の歳になり、凍夜はある人に
引き取られる事になった。その人とはずっと凍夜を見ていてくれた病院の
医者である
の歳らしく、今更子供を作る予定はないという事なので、凍夜を引き取り
義理の母として面倒を見てくれる事になった。
凍夜は最初は無視をしていたが、次第に早苗には話す様になり、大人しく
する事も覚えた。病院には通いながらも普段は何もないので凍夜は
中学三年の冬から学校に通う事になった。体を鍛えている時にこの世界の
無駄な事を知る為に勉強もしていたので凍夜はどんな学校でもついていける
知識もあった。
そうして中学を卒業し、高校に入る事になったが、その時に早苗にある
事を言われた。
「ただ学生生活をするだけじゃなく、何かを残すくらいの事をしてみたら
どうだ?」
「何かってなんだよ」
「それは自分で考えな。でも、無茶はするんじゃないよ」
凍夜はいつ死んでもいいと思っていたが、早苗に言われて色々考えた。
そして、病室でずっとひまつぶしに見ていた野球でもしてみようかと
考えた。でも、ただ強いとこに行って簡単に勝っても面白くないので
凍夜は弱小校に行く事にした。その方がめんどうな規律とかもないだろうと
思っていたからだ。
そうして高校生になり、凍夜は
入学した。そこはスポーツよりは勉強の方に力を入れてるのでどの部活も
運動部は強くはなかった。凍夜は部活の体験入部ができる日にすぐに
野球部に見学に行った。
すると、やはりというか当たり前と言うか、そこには遊んでる様に
しかみえない感じで練習している部員達がいた。
「予想通りだな。さて、監督は」
凍夜は監督を探した。こんなチームだからもしかしたら監督も部活に
来ないかもと思っていた。すると、同じ一年らしき生徒達が
ベンチの方で集まっている。その一年の前にジャージを着た女性が
居た。
「まさかあれが監督か?女でもできるのか」
不思議に思った凍夜はそこにいくのをためらったが、誰かに話かけられた。
「君、入部希望?」
「!?ま、一応な」
「じゃぁあっちに行こうか。他の一年生も集まってるよ」
話しかけてきたのはジャージ姿でツインテールをして、豊満な胸をしている
女の子だった。
「あんたは?」
「私は野球部のマネージャーで二年の篠塚めぐみよ。よろしくね
一年生」
凍夜はめぐみに連れられて一年の所に行った。そして、
列に並び監督が話し出す。
「集まったわね一年生。私がこの碧陽野球部の監督をしている
うちは普通よりいえ、はっきり言えば最弱校よ。私も去年から
入ったばかりだけど、去年はひどかったわ。でも、私は勝ちたいと
思ってる。そして、甲子園を目指してるわ」
「甲子園」
監督の言葉にざわつく一年生達。おそらくここに入る人達は半ば
遊び半分で入ってみようと考えていたので監督が甲子園を目指すと
なるときびしいのではと考えてしまった。
「私は負けたくないの。皆はどうかしら?もし、遊び感覚で入るなら
今のうちにやめなさい。練習は厳しく行くから」
一応数十人いた生徒は数人になった。半分ほどが諦めた様だ。
「じゃぁ残ったあなた達は本気でやってくれるのね」
「ハイ!」
「ありがとう。それじゃ名前とポジションを聞いて行こうか」
順番に自己紹介をする。八人が終わり、ラスト九人目の凍夜の番に
なった。
「じゃぁ最後はあなたね」
「長峰凍夜。ポジションはま、ピッチャーかな」
「お、投手ね。よかったわ。一年生の中で誰もいないかもって思ってたから!
それで、経験は」
「野球自体の経験はない。練習はした事はあるがな」
「でも、良い体格をしてるのは確かね。うちは投手が不足してるから
やってくれると助かるわ。じゃぁ見せてもらっていいかしら」
「ああ。こんな格好でいいならな」
「本番じゃないからいいわよ。それで、あとはキャッチャーね」
監督が練習していた二、三年生を呼び、凍夜の投げる所を見てもらうのと
取ってもらう為に二年のキャッチャーを準備させた。
少しして準備ができ、凍夜がマウンドに向かう。
「これが本物か。ま、学校のだがな。さて、どうするか」
凍夜が考えていると監督が話しかけて来た。
「長峰君!まっすぐを見せて。できれば全力で」
「全力ね。ま、死なない程度に投げるか」
「死なない程度って」
凍夜は構えた。そして、キャッチャーに向かって投げた。すると
その玉はあっという間にミットに吸い込まれて、キャッチャーが
後ろに倒れてしまった。
「な、なに?今のスピード」
「すげぇ音したぜ」
「っていうかキャッチャー大丈夫か?」
キャッチャーは叫びながら手を痛がっている。ベンチに戻し
治療をする。
「監督」
「めぐちゃん。あれどう見る?」
「どうもこうも。とんでもないです。あれ、もしかして160ぐらい
出てませんか?」
「高校生でそんなスピード。よくて150とかじゃ」
監督とめぐみが驚いている中、凍夜はマウンドで待っている。
「おい、どうするんだ?」
「あ、えっと。ねぇ自分でスピード計った事ある?」
「いやない。そんなの気にしてないからな」
「じゃ、じゃぁ計ってみましょう。めぐちゃん用意して」
「はい」
めぐみはスピードガンを用意するが、肝心のキャッチャーが
まだだった。
「おい、誰か取る奴いないのか?いないなら壁にでも投げるが」
「それでもいいけど、あなたの玉を取れるキャッチャーがいないと
意味ないし」
監督が考えていると誰かが声を出した。
「それなら俺がやりますよ」
「あなたは一年の伊藤君だよね。キャッチャーだっけ」
「ええそうです。だから俺が取りますよ」
「でも、あれを取れるの?」
「取るぐらいなら。じゃぁ準備しますね」
準備を始めたのは一年の
容姿は悪くなくモテるタイプだ。その遙は軍手をし、ミットを
つけて、さらに防具もつけて凍夜の所に向かった。
「お待たせ。同じ一年の伊藤遙だ。よろしく」
「お前に取れるのか?」
「取るくらいならね。これでもシニアでやってたから」
遙がホームに向かい構える。監督の合図で凍夜も構える。そして
ため込んでから投げた。それはさっきと同じでものすごい速さで
ミットに吸い込まれ激しい音がした。遙は体制はくずしたが
しっかりとその玉を取っていた。
「い、痛いなこれは!でも、こんな玉、メジャーでもいないぞ」
「めぐちゃんスピードは?」
「あ!えっと!?ほ、本当に160です」
「160!?」
部員全員が叫んだ。高校生が投げれるスピードじゃないからだ。
「長峰君」
「なんですか?」
「た、体力は?一試合投げれるだけの体力は?」
「あるに決まってるだろ」
「決まり!皆、これからは彼がうちのエースよ。そして、甲子園に
行けるわ」
監督の言葉にやる気のなかった先輩たちも少し本気にやってみようと
考えだした。その後、まだ部員じゃないのに凍夜を相手に部員全員を
打席に立たせて凍夜を投げさせた。そして、凍夜は部員全員を全部
まっすぐのストレートだけで三振させた。
そうして凍夜の初めての野球部体験は終わった。
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