告白
水谷一志
第1話 告白
一
今日、私は告白する。
「……愛してる」と。
二
私は彼と出会うまで、特に何かに熱を上げることなく、人生を送ってきた。
どこか、何に対しても冷めたような態度をとる自分がいた。
でも……、そんな私の人生は彼によって変わる。
三
彼との出会いは、突然だった。
それはたまたま私が図書館に行った時のこと。
私は特に本を探していたわけではないが、たまたまとある本を見つける。
その本は名前くらいは有名なので知っているが、内容に関しては全く知らない本。
私がその本の辺りを見ていると……。
「本、好きなんですか?」
たまたま声をかけられる。
四
その一言で、私はその本を読むようになった。
「最初は抵抗があるかもしれませんが、意外と面白いですよ。」
少し背の高いその人はとても優しそうな人。
そして私は本を借りて読み進める。
そのうち、その本の世界観にどっぷりはまっている自分がいた。
それは私の知らなかった物語。
私はそれを楽しむと同時に、たまたま出会ったその人のことも頭をよぎり、
『彼について、もっと知りたい。』
……そんな二つの感情を持ってしまった。
五
それから、身長の高いその人とは何度か食事に行く仲になった。
私は昔から会話では聞き役になることが多いので、話題はいつも彼の話。
まあそうでなくても、私は自分の話はしなかったであろう。
なぜなら、私は彼のことをもっと知りたかったから。
そして私は食事を終えて家に帰った後、また本の続きを読む。
すると不思議なことに、その瞬間彼とつながっているような気さえした。
六
そして私はまたも食事に向かう。
見るからに穏やかで優しそうなその人は会話もとても上手だ。
私が相槌を打つだけで何も自分のことを話さなくても、その人は色々と話をしてくれる。
そして私は彼についてもっと詳しくなる。
……詳しくなり、もっと彼のことが好きになる。
これは、もっと深みにはまっていく、ということなのかもしれない。
七
そして私は他の本も勧められる。
その本を私はどんどん読んでいく。
そしていろんなことを私は感じる。
それらの感情は全て、大げさかもしれないが彼につながっているような気がした。
八
しかしここで私の中に葛藤が生じる。
私が、『愛してる』と言ったら、びっくりするのではないだろうか?
何ならもう会ってもらえないかもしれない……。
それほど私は、今の私は自信がない。
でも、そんな時に思い浮かぶのはあの人の笑顔。
本当に、優しそうな笑顔。
……そして、彼の生きざま全て。
九
さあ、準備は整った。
今日、私は告白する。
そして私は【実家】に向かう。
……【私の両親】にはっきり言おう。
「私、【イエス様】を心から愛してる」
「私、【クリスチャン】になったの」
PS 図書館で勧誘されるとは思いませんでしたが。 (終)
告白 水谷一志 @baker_km
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