第2話
「お目覚めですか? 殿下」
ひらりと揺れるヘッドドレス。
ぼんやりと眺めながら、綺麗な人だなとこれまたぼんやりと考えていた。
「言い換えましょうか、前世の記憶ははっきりと戻りましたか? 殿下」
その言葉を聞き、脳が理解した瞬間、ぼんやりとしていた思考はクリアになり、世界はより鮮やかとなった。
こちらを顔を覗き込んでいる綺麗な顔立ちの女性も、より綺麗に見える。
「どうやら戻ったようですね。ああ、なぜそんなことがわかるのか。きちんとご説明致しましょう。
ですが、まずはお着替えして朝食を頂いてからにしましょう
大丈夫です。私は殿下の味方ですので。安心してくださいね」
ひらりと揺れるヘッドドレス。
何を言っているのか、そもそも貴女は誰なのか。
何も理解出来ない。しかし、ひらりと揺れるヘッドドレスを付けた彼女、メイドだろうか?
彼女は僕の身体を持ち上げ(!?)、ベッドから降ろし着ている服を脱がし始めた。
「ああ、もう一度自己紹介致しましょうか?」
「…………ううん、だいじょうぶ」
やけに舌が回らない。
やけに腕や足が短く感じる。
だけれど、記憶が整理されてきたのか、だんだんと思い出してきた。
彼女はメイドのメア。
僕の専属のメイドらしく、産まれてから思い出せる記憶の中で一番多く登場する人。
とても綺麗で、いつもお世話してくれる優しくて、穏やかな笑顔の人。
そんなイメージが思い起こせた。
「はい、お着替え終わりました。お食事する場所は分かりますか?」
少し顔を赤らめながら、メアの着替え作業は終わっていた。いつもやっていることだから手慣れている。
「うん」
これも記憶にある。
短く感じる足をぽてぽてと動かしながら、部屋を出る為に扉へと向かう。
「では、参りましょうか。今日の朝食は、昨日までの殿下が好きなメニューだそうですよ。今日からの殿下もお好きなら幸いです」
不思議な言い回しだ。
だけれど、この上なく正しい言い回しでもある。
彼女からどんな話を聞けるのか、そして朝食のメニューはなんだろうか。
思ったのは、意外と呑気なことを考えているということだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます