明け方の夢
あの方は言った
…分かった…分かったから…もう…そんなに泣かないで…
夢の中で
確かにそう言った
強く抱き締められたその腕の温もりの中で
我知らず涙が頬を伝い
きらりと光って滑り落ちた
たった一度きりの夢の中での出来事
…あの方が夢の中に出てくるなんて…
今までそんなこと
一度もなかったのに…
どうして“今”なのだろう…
夢の中で必死に何かを叫んだが
口から一体何が紡ぎだされたのか
全く覚えていない
何故大切なものって
喪う間際にならないと
分からないものなのだろうか…
喪った後
その重みもじわじわ増すと言うのに…
人の感情も記憶も
時間が経てば少しずつ薄れていくもの
でも
あの方の背中の感触
体温と重み
この腕に纏わり
いまだにはっきりと残っている
恋でもなく愛でもない
深い想いが肺を締め付けたまま…
もう二度と会えないあの方は
今どこかで元気にしているだろうか…
夜具の上で時間だけが優しく静かに過ぎていく…
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