四十過ぎのオッサンが処女作で、青春モノを書いたら怒られるだろうか。 いや、どうか勘弁してもらおう。

ナガフチ・ナイマン

序章(プロローグ)

壁面にママが叩き付けられ、顔面を壁に圧迫される様を見ながら、僕はクラムチャウダーをスプーンから啜る。




その無慈悲な掌の間から覗くママの眼先には、僕がいる。




「ごちそうさま」僕は2階に駆け登った。






西船橋駅の改札を、男子高校生が、朦朧とした状態でパスケースを、かざして通過する。




今日の進路判定模試で、T大学の判定が厳しかった場合、進路の変更を余儀なくされる。


そうなれば、パパは、あからさまに舌打ちをし、ママを叱咤し、壊しだす。


朝、ママは食事の用意をしながら、僕を見つめ「次、頑張ろうね」って、全くの無表情で諭すんだ。


あの顔を見ると、喉の奥が苦いもので圧迫される。




エスカレータで1番ホームに降りた男子高校生は、隣のホームで、あいつを見つけた。




 「なんだ、、いるじゃないか」




高校生は、通勤ラッシュで込み合う乗客の列を掻き分け、あいつの背後に立った。


後ろの禿げたジジイが「おい、割り込むなよ」と言っていたが、男子高校生は躊躇する事無く、背中を押した。


一瞬だけ、あいつは線路内で宙に浮いていたが、次の瞬間には、東西線の電車が、その体ごと持って行ってしまっていた。悲鳴と叫び声の中で、高校生は考えた。






 ところで、誰だっけ?






後ろの禿げたジジイに体を取り押さえられた高校生は、歯ぎしりをしながら


くそっ!これで模試に間に合わない。


僕の人生が狂ったら、こいつのせいだ。


僕のせいじゃない。


だから、どうか、ママを殴らないでくれって、パパに懇願するんだ。


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