第193話 ユキ編2
この世界に来てからは楽しいことばかりで本当に心が躍っていたわ。
パパやママに会えないのは寂しいけれど、お姉ちゃんだけじゃなくユーナちゃんやダリアお姉ちゃん……あたしを
それとこの5年間、母として師匠としてあたしを育ててくれた杏樹さん。
「ユーナ……ダリア……杏樹……うっ」
「どうしたの? ドレイク?」
「いえ……何か聞いたことのあるような名前だったので」
「そう。知り合い……じゃないわよね?」
「なんだろう、杏樹って名前を聞くと、なぜか悪寒がしました」
「ふふ、確かに貴方が大人だったらどうなっていたかしらね?」
「どういうことですか?」
もう、5年も前になるのかしら?
仲間と呼べる人にリュージと愛輝っていう男の人もいたわ。
ダリアお姉ちゃんが目覚めないことがあってね、ユーナちゃんも連れて四人で勇者の居城に乗り込んだことがあったのよ。
「勇者の居城!?」
「と言っても、本人には会ったこと無いんだけどね」
そこでパティって言う、あたしと同じくらいの年の女の子と出会った時からかな?
そこから記憶は何も無いの。
あたしは約半年間、目が覚めなかったみたい。
「パティって……まさか?」
「ドレイク、知っているの?」
「はい、姫様と同じくらいの年の女の子が、ならず者と共に俺たちの生まれ故郷を……無茶苦茶にして……あいつ、そんな前から」
「そう、どうやってか知らないけど勇者軍の南下がさらに進んでいるみたいね」
「俺たちの村はどうやらこの大陸の最南端らしくて……撤退したとは言っても、それってほぼ最南端まで制圧されそうってことですか?」
「他の大軍は見ていないんでしょ? 偵察目的で小隊なら特におかしくは無いわ。魔王軍の領地でもたまに勇者軍たちの虐殺が起こっているのをよく耳にするわ」
あ、少し逸れちゃったわね。
話を戻しましょう。
あたしが眠っている間にいろいろ変わってしまった。
全部、杏樹さんに聞いたことになるけれど、そこからかな?
お姉ちゃん、ユーナちゃん、ダリアお姉ちゃんは行方不明。
リュージと愛輝は裏切り、ホスピリパの町を消滅させた。
それからなのよね……男の人に嫌悪感を感じ始めたのは。
「あの女! そんなの嘘だ!」
「嘘?」
「す、すみません。何だ……今のは?」
「確かに支離滅裂よね。でも、あたしにはその時は信じられる人が杏樹さんしかいなかったから、他に知人も証拠も無かったからね」
「その……杏樹さんって方には会えませんか? 俺も会ってみたいです」
「3か月前に行方不明のお姉ちゃんたちを探しに行ったわ。今の状況を保ってくれていれば、それで良いからって言って」
「聖女様、いないの――?」
「あら、ソウジ。杏樹さんが聖女様ってどこで知ったの?」
「メイドのお姉ちゃんから聞いた――」
「そう、貴方たちの部屋があるフロアは元々、杏樹さんが使っていた場所なの。女の人しかいなくて、凄く安心できるでしょ」
「うん」
「お、俺は……ちょっと恥ずかしいかな」
「杏樹さんは男には慈悲も容赦も無く駆除し、女の人にはまるで女神のような振る舞いを見せる人だからね。あたしも少し影響されたのかな?」
「絶対にそうです!」
「え?」
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