俺、神様になります

昼神誠

第1章 混沌の世界へようこそ

第1話 リュージ編1

 ふむ、87位か。

 今日は、期末テストの結果発表の日だ。

 相も変わらず、平均ドンピシャの点数で俺は十二分に満足している。

 上位でもなく、下位でもない。

 誰とも極力関わらないでいいのは中位が一番なのである。

 だからと言って引きこもりになると社会に出た時に悪影響を与える。

 引きこもり以上、リア充以下といったところか。

 上辺だけの人間関係で俺は十分なのだ。

 俺は自分でもオタクだと自負している。

 アニメに漫画、そしてネトゲ。

 特にネトゲは良い。

 必要な時のみ人付き合いだけして、それ以外は無視できる。

 ギルドは利用するだけで、こっちから手伝う気は更々無い。

 俺は薄っぺらい人付き合いをして、ストレスの無いスローライフを送る。

 それが俺の最大の目標だ。


 昼休みになると、俺はいつも屋上で昼寝をすることにしている。

 今日はこれ以上にない良い天気だ。

 昼寝には持って来いだな。

 早速、横になり目を閉じる。

 暫くすると風が強くなってきた。



「ん? ここは?」

 

 俺は学校の屋上で昼寝をしていたのだが……。

 目を開けると、そこは広い草原だった。


「ここは何処だ?」


 屋上と同じように心地良い風が吹いている。


「……異世界? んなことあるか? また寝て起きたら、屋上に戻るかもしれないな」


 俺は近くに立っている大木の下まで行き、また目を閉じた。

 ふぅ、昼寝には最高の場所じゃないか。


「ちょっと……そこの貴方」


 どこからか、大きな声がする。

 だが、俺は気にも留めず寝ることにした。


「あの! あの! ちょっと!」


 うるさいな。

 俺は耳を澄まして、どこから声がするのか探ってみた。


「ちょっと! 起きなさいよ!」


 これは俺に言っているのか?

 俺はゆっくりと目を開けてみるが、辺りには誰もいない。


「よし、寝るか」


「寝るか! じゃないわよ! 上よ! 上!」


 上?

 上を向いてみると、少女が木の上にちょこんと座っている。

 ロングストレートの綺麗な金髪で青い目の少女だ。

 白色のワンピースを着ている。


「ほほぅ、白……か」


「ちょっ! どこ見てんのよっ!!」


 ドスッ!


 彼女は木から飛び降り、そのまま俺の顔面に着地してきやがった。

 だって、仕方ないやん。

 見えるんだもの。

 木の上に見える姿勢で座っているこいつがいかんのだ!


「ごほっごほっ! 私はユーナ! えっと、貴方は神様の導きにより異世界に召喚されました」


「分かった。それじゃ、さっさと帰せ」


「帰せじゃないわよ! 貴方、バカなの? バカでしょ? いいえ、バカだわ!」


 なんだ、いきなり怒り出して。

 あの日か?

 まったく、女ってやつはこれだから……。


「貴方の名前はカンナギ・リュージでいいのよね?」


 うわ、なんだ。

 俺の名前を何で知っているんだ。

 怪しい、怪しすぎる。

 表情も自然と変わる。


「ちょ、ちょっと! 何よ! その顔は! 貴方、私が誰なのか知っているの!」


 そんなもの知るはずもない。

 見たこともない奴の正体がどうやって分かるってんだ。


「いい? 私は女神よ! 女神様なのよ! さぁ、私を畏れなさい! 私を讃えなさい!」


「はいはい、分かった。だから、さっさと帰せ」


 女神?

 異世界で女神?

 はぁ?

 なんだよ!

 ラノベでありきたりすぎて間に合ってますって。


「さっさと帰せじゃないわよっ! さっきも言ったけど私は女神様なのっ!」


 相変わらず、騒がしい奴だな。

 なんだ?

 漫才か?

 お前と漫才?

 なんで、そんなことしなきゃならないんだ。

 こういう輩には無視するに限る。


「ちょっと! いい加減に私の相手してよぉ。お願いよぉ!」


 うわぁ、なんだ。

 女神様が半泣きだよ。

 泣けば相手してくれているというタイプか?

 俺に常套手段は通じんぞ。

 面倒だし、何処か行くか。

 俺は、そそくさとその場から逃げるように離れた。

 泣いた女の世話なんて、やってられるか。


「ちょっと! 酷くない! 貴方、本当に人間? 健気な美少女が泣いているのよ!相手をするのが普通でしょ! 貴方、本当はゴブリンでしょ! いいえ、ゴブリン以下だわっ!!」


 おいおい、ゴブリン以下呼ばわりされちまったぜ。


「ははっ。面白いこと言うねぇ。ボクハスライムダヨ。……じゃ、俺はこれで。」


 本当に相手にしてられない。

 さっさとこの場から離れて、飯を食べたい気分だ。


「何ですってぇぇぇぇ!!!」


 またかよ。

 振り返ってみると、彼女はプルプルと震えている。


「貴方、モンスターだったのね!!」


「ふぁっ!?」


 流石に俺も驚いた。

 俺がモンスター?

 どう見ても人間だろ?


「まさか、召喚に失敗してスライムを呼び出しちゃうとはね。私もまだまだね。」

「ふぁっ!?」


 俺がスライム?

 何を言ってるんだ?

 バカなのか?

 いいや、バカだ。

 この女神様はバカなんだ。


 はっ!!!

 俺は自分が適当に言ったことを思い出した。


「モンスターは私が浄化する!」


 女神様が完全に戦闘モードに入っているぅぅぅ!


「あ、あの女神様?」


「んぁ!!」


 すごい形相で睨まれた。

 女神の顔じゃないよ!

 悪魔だよ!

 誤解を解かないと、何をされるか分かったもんじゃない。


「女神様、冗談ですよ。先ほどは素っ気ない態度を取り失礼致しました。私はれっきとした人間です。女神様の味方です! 決してスライムではありやせん! どうか、御心をお静めに!」


「ああん!? 本当に人間?」


 ヤバい!

 殺される!

 伝説の超戦士みたいに全身が光っていらっしゃる!

 戦闘力は53万!?

 いや、それ以上か?

 戦闘力何て分からないけど。


「女神様、どうぞお怒りをお静めくださいませ! 私の失礼な態度が女神様を激怒させてしまいました。お許しください! 美しい女神様! 素敵な女神様! 見目麗しい女神様ぁ!」


 俺は心にも無いことを言って、その場を収めようとした。

 彼女の怒りを鎮めるために、必死で適当なことを言った。


「あ、あらぁ。そう! 美しい? 素敵? そうよ! 分かればいいのよ!」


 うわぁ、チョロい。

 チョロすぎる。

 あ、そうか。

 こいつが俺の異世界生活におけるチョロイン第一号なんだぁ。

 いや、それは駄目だ!

 こいつは俺のタイプではない。

 可愛いけど性格がダメだ!

 そんなことより、元の世界に帰るのにチョロインなど必要無いのだ。

 いや、実際にはチョロインは居てほしいが、こいつを第一号と認定する訳にはいかない。


「では、俺はこれで」


 俺は今すぐにでも、こいつの元から離れたかった。

 面倒くさい女の相手などしてられない。

 異世界など御免被る。

 元の世界に帰って、ストレスの無いスローライフを送る。

 それが俺の最大の目標だ。


「ちょっと待ちなさぁぁぁい!!」


 あー、もう!

 予想通りだよ。

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