訓練終了そして、出発


 ここはどこだろう。学は知らない光景を見ていた。真っ白の空間に4人の男女と向かい合う様に神々しい女。そして、男女の集団の後ろに少年、学が倒れていた。


 「彼に何をしたの?!」


 集団の1人の少女が叫ぶ。彼女は学を指差し神々しい女に怒りの形相で見ている。


 「彼は私のスキルを見てしまったようね。神のスキルを......いえ、私は何もしてないわ。彼が勝手に倒れたのよ」


 女は表情を変えず、淡々と述べる。彼女にとっては学はどうでもいい存在のように。そして、女は続けて発言する。


 「貴方達は異世界にこれから勇者として召喚されるわ。何故かそこの彼はようだけど」


 それは倒れている少年、学を示している事を上から見ている様にしている学にも分かった。そこまで見ていた光景に光が差し見えなくなる。


 〈くそ、この先の光景に何か大事な事がある様な気がするのに〉


 悪態を着くが見えなくなってしまった物は仕方ない。ここまでで学の意識が覚醒するのだった。





 「起きた、学君」


 気付くと屋敷で手配されている学の部屋だった。学は体を起こし声がする方を見るとアリシアが椅子が椅子に座っていた。その表情は少し心配そうにしていた。


 「ああ、今起きたところ。あれからどうなったの?」


 あれからとは、アリシアはその事は昨日の訓練での模擬戦の事を言っているのだろうと直ぐに分かる。


 「学君はジョセフに担がれてベッドに寝かされたの。それから丸一日目が覚めなかったんだよ。本当に君はよく意識が無くなるね」


 アリシアはジト目でこちらを見ている。呆れ半分心配半分といったところだろうか? 

学は、またかと苦笑し申し訳ない気持ちになる。


 「でも、ジョセフが褒めてたよ。よくあそこまで戦えるようになったって。いつか本気を出した自分と模擬戦したいって」


 「えっ? それは勘弁」


 褒められるのは嬉しいが本気のジョセフと模擬戦はしたく無い。きっと怪我程度で済まされないだろうだからだ。


 「それと『ラーニング』を確認しときなさいって。多分、変質してるからって」


 学はそれを聞き目を見開く。そんな話を聞いたのは初めてだったからだ。さっそく、自分の頭の中で『ラーニング』に意識を向ける。すると知らないスキルに変わっていた。


 『フリーラーニング』


 学習能力を大幅に向上。


 権能

 ユニークスキルを見て理解、習得する。(合計5つまで。習得出来るのは残り3つ)


 サポートラーニング(使用不可)



 「確かに変わってる」


 驚いている学にアリシアがスキルは変質する場合があると話し始める。


 「驚くのは無理も無いかもね。言って無かったし。まさかこんなにも早く変質するなんて思ってなかったから。ジョセフいわく、学君に適した形に修正されたんだろうって」


 「俺に適した形」


 学はもう一度、スキルを確認する。ユニークスキルを無闇矢鱈に習得出来なくなり死闘を繰り広げるとかの命に関わる権能がなくなっている。その変わり元々の学習能力自体がパワーアップしたと言うことだろう。


 そして、なぞの権能サポートラーニング。これが何なのか説明がないがアリシアにも前に権能は無理に理解しなくてもいいと言われていたので無視をする。


 「今回はどんな風に変わったか聞かないでおくよ。本来はスキルって他人に喋るもんじゃないからね」


 「ああ、ありがとう」


 学はアリシアには教えてもいいのにと思ったがせっかくなので好意に甘え黙っておく。


 「さあもう夜だし、ご飯にしよっか。ボクお腹がペコペコだよ」


 「まじか、そんな時間だったのか」


 実は学が目が覚めたのは夜。模擬戦が終わってからそれまで何も食べておらずお腹が空いている。アリシアも心配で学を見ていたのでそんなに食べてないのだ。

 何故、アリシアがそんなに学を心配するのかは誰も知らない。その理由は後に明かされるだろう。


 「さ、行こ!」


 「ちょっと待て、引っ張るなって」


 アリシアに手を引かれ学は食堂に行くのだった。





 次の日の朝。朝食を食べアリシアと学は屋敷の玄関の外にいた。服装も動きやすい服になっている。いかにも冒険者と言う感じだろうか。

 黒を主体の服が学。スカート履き、ローブを纏っているが動きが妨げれない様になっているアリシア。

どちらの腰にもマジックバックと呼ばれる物が付いており、中には旅に必要な物が入っている。

 そして、見送りにジョセフを初めとした屋敷の使用人達が勢揃いだ。


 「行ってらっしゃいませアリシア様。どうか怪我のないよう」


 「うん、ありがとうジョセフ。行ってくるね」


 アリシアに挨拶をし最後に学を見るジョセフ。


 「お嬢様の事をよろしくお願いします」


 「はい、行ってきます」


 2人は屋敷の面々に頭を下げ振り返り歩き出す。この先、何が待ち構えているのだろうと期待に胸をふくらませて。


 




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ここまで読んで頂きありがとうございます。これでプロローグ的なところまでは終わりました。次回から本編になるので少し駆け足になりました事はすみません。早く描きたくてつい( ̄▽ ̄;)


 とその前に幕間としてプロローグまでの話の補足になるような物を2話。そして、次の章の話に繋がる1話を書きます。一応、読まなくても大丈夫です。


 では、今後もよろしくお願いします!

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