スキル『 ラーニング 』で異世界生活

果汁

プロローグ的ななにか

始まりの日

 始まりは突然だった。


 辺り一面、緑が生い茂る平原で黒髪の少年、まなぶは1人ぽつんと佇んでいた。歳は16歳程であろうか? 服装は、Tシャツに短パン、中肉中背のどこにでもいるような平凡な少年だ。


 「ここは、どこだ? 何も思い出せないのだけど......」


 学は、何故ここにいるのか? そして、自分が何者なのか? 覚えていなかった。

 彼はここに至るまでの記憶が何一つ覚えていなかったのだ。唯一覚えているのは、自分の名前と地球と呼ばれる場所で暮らしていた事だけだった。暮らしていたといっても、それは1人で暮らしていたのか誰かと暮らしていたのかも分からないのだが......

 この時点で、平凡の少年とはかけ離れてしまっている。


 「とりあえずこんな場所にいるより人がいる場所にいこう」


 前に1歩ずつ踏み出しこの場から離れ始める。見る限り、周りに人の気配の無い場所で1人でいるのが不安になってきたのだ。


 学は、不安を打ち消すように考え始める。何故自分は、ここにいるのか? 誰なのか? そして、ここはなのか? と。そこまで考えて、足を止める。


 「何で俺は今、異世界なんて考えた?」


 何も覚えていないと思っていたが、妙にこの場所がなんて言葉がしっくりくる。まるで最初から知っていたかのように。

 そこで、学はある言葉を口にする。もし、異世界ならよくありがちな設定があるのではないかと信じて。そして、この状況を打開するヒントがあるのではないかと思い、


 「ステータス」


 その言葉を唱えた瞬間、頭の中、いやここはイメージと言った方がいいのだろうか? 自分のステータスが思い浮かぶ。



 name; 学


 種族; ヒューマン


 装備;

  武器 

  頭

  胴 地球のTシャツ

  腕 

  足 地球の短パン

  靴 地球のスニーカー


 スキル


 ユニーク

  『ラーニング』 『鑑定』


 称号

  『神の悪戯に巻き込まれた者』 『集団転移に巻き込まれた者』 『記憶を消された者』



 「......」


 なんとも、ツッコミ所満載だなと思ったその時、目の前に、謎の生物が現れる。それは、赤黒い色をしたスライムのようなものだった。



 目の前に現れたスライムだと思われる生き物。赤黒く、うっすら透けてみえる液体状の体? をしている。体を僅かに震わせ少しずつ近付いてくる。


 学は、距離を取るようにスライムから目を離さず、後ろに下がる。それは恐怖からくる咄嗟の行動だった。危険だと思う生物から逃げるように。だが、しかし学の想像より、このスライムは危険な存在だった。


 「いたッ」


 急に右肩が痛み出す。それは熱をもったかのような激しい痛みだった。


 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 

 悲鳴のような声を上げながら、右肩をみると何かに貫かれたように丸い傷が出来、血が流れている。何故? と考えるまでもなく原因はスライムだろう。だが、学は突然の出来事にパニックになり冷静な判断が出来なくなっていた。


 「痛いやばいヤバイヤバイ、離れなきゃ、死んでしまう、死にたくない、クソ誰か助けてくれ!!!」


 慣れない場所、見慣れない生き物、そして突然の痛みと出血、全てが重なり、スライムに背を向け死にものぐるいで走る。

 何度も転倒してその度に傷が痛む。でも、逃げなければならない。自分に迫る確実な死から。


 しかし、スライムはそれを見逃す程甘くはなかった。触手のように体の一部を伸ばし、まるで槍で貫くかの様に物凄いスピードで学の左足の太ももを貫いた。


「ぐぅああああああああぁぁぁ」


 貫かれた事により転倒する。もう、痛みで何が何だか分からない。ただ、のたうち回るしか出来なくなってしまった。だが直ぐに段々と体の力が抜けてくるのを感じる。感覚が麻痺してきたのか痛みが無くなってくる。


 「......あぁ.......死ぬ......の......か」


 学は、眠るようにして意識を失った。







 

 学が意識を失い、周りを出血による血溜まりした場に、先程のスライムが到着する。餌となる獲物が目の前にいるのだ。逃す筈もないだろう。しかし、スライムが学を捕食する事は出来なかった。何故なら......


 『 瀕死状態になった事により『ラーニング』の発動条件の3を満たしました』


  学のスキル『ラーニング』が発動したのだから。


 『 デッドスライムの所持スキル『再生』の習得に挑戦......失敗......再挑戦......失敗......経験が足りない為失敗......種族の枠が違う為失敗しました』

 『 『再生』の下方スキル『治癒力上昇Lv3』の習得に切り替え......習得に成功しました。宿主の体を治癒します』


 『治癒力上昇Lv3』を習得した事により、ゆっくりだが確実に傷が癒え始める。


 『 辺りに宿主の害になる生物反応あり。『 ラーニング』の一部権能を使用不可にし、周りの生物を除去します』


 学を中心に光の円が広がり始める。それに触れたスライムは、まるで最初からそこに居なかったかのように姿を消したのだった。


 『除去中......成功しました。この権能はこれ以降使用不可になります』


 『『ラーニング』の権能が4つから3つになりました』


 こうして、二度と起きる事が無いであろう奇跡により学は救われたのだった。




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