Ver.7.1/第43話
「どーなってんの?」
最後にインしてきたモカが、戦況を理解して一言。
「「さあ……?」」
ただ、モカよりも先にインしたといっても、数分違いであったマカリナとネマキでは、彼女の問いに答えることはできなかった。
現在、わかっているのは、どういうわけだか封魔の一族が味方についてランキングのトップに返り咲いたものの、テスタプラス陣営の怒涛の追い上げでどちらが〈魔界の覇者〉に君臨することになるのか予断を許さない状況ということだけだ。
テスタプラス陣営に再逆転の目が出てきたのには理由がある。
最終ラウンドのルールとして、〈裏切り〉や〈合併〉による陣営変更の期限は終了の48時間前までとなっているせいで、ランキング下位の陣営のいくつかが終了時間を待たずに戦いから脱落しており、無防備な所が散見されるようになったのだ。
これは、陣営単位で大規模に発生している所もあれば、局地的に発生している所もある。テスタプラス陣営は、そういう所に当たりをつけてなりふり構わず戦線を広げていた。
当然、この混乱に乗じて再びトップを目指そうと動き出す陣営もあれば、最後まで抵抗を続ける陣営も少なくないため、成功率自体は、決して高くはないように見えるが、着実に両者の差は縮まっている。
「あ。帰ってきた。何かわかった?」
モカだけでなく、マカリナとネマキの3人が混乱極まる魔界の状況を把握しているところに、ハルマが転移で戻ってきた。
「えーと。簡単にいえば、反乱によって革命が起こってました」
「「「へ?」」」
突然の物騒な展開に、3人とも目を丸くする。
あの後、ハルマが連れていかれたのは、城の玉座の間であった。しかし、そこに王はおらず、玉座は空席のままであるだけならまだしも、ハルマが座るように促されてしまったのである。
そうして、戸惑いを隠せないまま玉座に腰を下ろすと、ようやく封魔の一族のエリアで何が起こったのかを教えてもらえたのだ。
玉座の間まで連れてきた女性NPCとは別のNPCがハルマの前に跪き語ってくれたのは、昨日、桃を届けた後に起こった変化であった。
「桃食べて元気になった住人が一念発起して、城主討伐に乗り出した、ということですか?」
「そうみたいですね」
ネマキが確認してきたことに、ハルマも頷いて答える。
「桃がフラグだったんなら、何で今日になって急に?」
マカリナが疑問に思うのも無理はない。しかも、この時間のズレのせいで、無用な混乱を招いているといえる状況なのだ。
「それなー。俺もよくわからんけど、魔瘴病が治るのに時間がかかるっぽいんだよ。で、元気になってから反乱が成功して城主を地下牢に捕えるまで24時間って決まってたんじゃないかなあ? 色々聞いてみた感じだと、俺達が桃を届けた時間と、急に封魔の一族の旗が変わり始めた時間が一致してるっぽいから」
「なるほど……」
話が出来過ぎている部分もあるが、ゲームの仕様として準備されていた筋書きなのであれば、24時間もかかるのは長すぎるかもしれない。とはいえ、これだけ大きな結果を伴うとなると、これくらいタイムラグはあってしかるべきなのだろう。
「そっかー。外からじゃなくて、中から攻め落とさないとダメだったってことだねえ」
モカがしみじみと口にした言葉で、他の3人も納得の表情を浮かべる。
そんなつもりは微塵もなかったのだが、奇しくも彼らなりのやり方によって攻め落としたというわけだ。
「それでは、ここまで頑張ったのですから、テスピー達には負けていられないですねえ」
封魔の一族の陣営を切り崩すことができた理由がわかったところで、ネマキが静かに口を開いた。
「いやー。でも、封魔の一族のエリアが全部ってわけじゃないですからねえ。3つに分断されているうちの1国だけみたいなんで、今がマックスっぽいですよ?」
500近いプレイヤーによる陣営。そこに干渉するように魔物の陣営と封魔の一族の陣営が隙間に並ぶ。その数はそれぞれ130程だ。うち、ハルマ陣営に新たに加わったのは、封魔の一族の陣営の30%ちょっとの数である。
ハルマがインしてきた時にはテスタプラス陣営を20近く上回っていたが、黙って見ている相手でもなく、なりふり構わぬ拡大戦術によって、1桁の差しかなくなっている。正直、再逆転されるのも時間の問題に思われた。
「それは、わたし達が今まで通り守りに専念したら、の話ですよね?」
ネマキは、穏やかに、しかし、不気味な笑みを浮かべるのだった。
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