Ver.6/第23話

『クエスト/灯せ、情熱の明かり』

【クエスト達成報酬/????】


「ほえ? クエスト?」

 こんな所でクエストが発生するというのは、聞いたこともないが、ハルマにとっては特別珍しいことでもなかったこともあり、驚きは大きくなかった。

 単純に、好奇心が膨らむばかりである。

 報酬が不明なのは気になるが、クエスト内容は目の前の壊れている街灯を修理するという、特別難しいものではない。

 特に、生産職を全てこなしているハルマにとっては、日課の延長戦みたいな作業である。

「クエスト専用レシピっていうのは、初めてだな」

 壊れている部分を修理するクエストである関係で、レシピは特殊なものが準備されているようである。ただ、ハルマはEXスキルとして〈修復〉を取得しているので、素材をそろえるだけで職人スキルを駆使して作る必要はなさそうだ。

「素材的には、だいたい店売りしてるものばかりだな。でも、見たことない素材もあるぞ?」

 必要な部品は、明かりを灯すランプ部分、ランプに魔力を送るための蓄電器ならぬ蓄魔器、この2種類だ。

 街灯は、ハルマのウエスト程度の太さがある大理石っぽい質感の柱に、2本の腕が生えたみたいに左右にランプが取り付けられたデザインだ。高さはあまりなく、2メートちょっとであろうか。背の高いプレイヤーであれば、ランプに頭をぶつけてしまうかもしれない。

「あー。この炎雷石ってのと、魔石塊ってのは、専用素材で、これを取りに行くのも含めたクエストなのか」

 おつかいクエストと呼ばれるような定番の内容だが、思っていた以上に、時間がかかりそうである。

 魔石塊は土の大陸に採取に行くだけだが、炎雷石は指定のモンスターを討伐し、ドロップさせなければならないらしい。ただ、もしかしたら、魔石塊の方も、採取場所を守るクエストボスが待っている可能性は否定できない。

「うーん。乗り掛かった舟だ。やるか」


 予定外のクエスト3連チャン。

 まずは、土の大陸に戻り、魔石塊を探しに行くことにする。

「と、その前に、〈ロックギター〉作ってからにするか」

 クエストボスが待っている可能性は、比較的高い。その場合は、〈ロックギター〉を試している余裕はないだろうが、炎雷石をドロップするモンスターは、それほどランクの高い相手ではない。むしろ、使い勝手を試すには、打ってつけの相手だ。

 ハルマは、転移オーブを使う前に、当初の目的地であった鍛冶ギルドへと向かうことにした。

 アコースティックギターは〈木工〉の分野だが、ロックギターは〈鍛冶〉の分野なのである。ロックスターが使っていたギターを思い出してみると、確かに木製というよりは金属寄りであった。


 鍛冶ギルドでは、数人の職人が作業を行っていたが、ハルマが入ってきたことに気づいた者はいなかった。クラスが追加されたにもかかわらず、職人作業に明け暮れるほどのプレイヤーなので、職人一筋なのであろう。それぞれ、作業に没頭しているらしく、他のことに構っている余裕はないとみえる。

 ハルマも、まずは空いている〈錬金〉用の作業台に向かい、作業を始めた。

 ロックギターは、使う鉱石によって攻撃力が変わるらしいが、最高品質のものを作ってしまっても、STRが足らないため使えない。

「鉱石をインゴットに変えなきゃいけないのに、出来上がったら岩に戻るんだよなあ。不思議なもんだ。とりあえず、俺が使えるのは鉄のインゴットまでか」

 分類はメイスなので、杖のカテゴリーに入る。ズキンの主力武器が錫杖のため、ハルマも杖のスキルはそれなりに育っており、メイスも問題なく使うことができる。ただ、やはりガード率による鉄壁の防御を考えると、基本装備は片手剣、遠距離での弓がメインとなるだろう。

 それでも、状態異常の付与がメインの効果になるとはいえ、〈ファイアーブレス〉以外に使える、待望の範囲属性攻撃ができるスキルである。状況によっては、選択できるようにしておきたい。

〈錬金〉を終え、〈鍛冶〉に向かうと、今度はハンマーを振ってロックギターを仕上げる。ハンマーで叩くだけでギターが出来上がるのかよと、ツッコミを入れる者はもういない。そういうゲームだと思うしかないものだ。

 こうして出来上がった鉄鉱石のロックギターを携え、ハルマは土の大陸へと向かうのだった。

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