第5章 救いの手

Ver.5/第46話

 1周年イベントの一環として開催されているミッションが始まって2週間が経とうとする頃から、Greenhorn-onlineのプレイヤーの中に、妙な噂話が広がり始めていた。

 中には、イベント終盤になって広がり始めたものもあるが、少しだけ抜粋してみよう。


 プレイヤーAの証言。

「第1エリアの森の中に、スゲー派手で目立ってただけど、山小屋みたいな小さめの建物を見つけたから入ってみたら、中に食糧や消費アイテムなんかが置いてあったんだよ。中には誰もいなくて、気味が悪かったから、何も取らずに出ちゃったけど、あれ、何だったんだ?」

 プレイヤーBの証言。

「俺達も第1エリアの森の中で建物見つけたから入ってみたぜ? こっちにも誰もいなかったな。まあ、不用心に食糧も消費アイテムも放置してあったから、ありがたくもらっていったよ。でも、別に、何も不都合はないぜ? あれ。運営が用意したんじゃないのか?」

 プレイヤーCの証言。

「私たちは、森で立ち往生してる時に、見かけた。ってか、私たちの見間違いじゃなければ、その場で小屋を建ててたわね。こっちは空腹状態で動けなかったんだけど、あれよあれよと小屋ができあがって、手招きしてくれたの。何だか怖かったんだけど、入ってみると、その人は消えちゃっていて、中に食糧だとか装備品だとか、消費アイテムなんかが置いてあったの。何がなんだか、サッパリだったけど、状況的に持って行っていいんだよね? って、話し合って、いくつか貰って行ったわ」


 プレイヤーDの証言。

「僕達が見つけたのは、第2エリアの山岳地帯ですね。いえ、建物じゃなくて、そうです、そうです、階段。それのおかげで平原のモンスターゾーンを突っ切る必要のない尾根を進めたんですよ。途中、ビックリトカゲとビッグイヤーがいる場所には小屋がありましたけど、あそこは事前情報がなかったら、きっと僕達だけじゃ無理でしたね」

 プレイヤーEの証言。

「あたしらは、第2エリアの山の麓だったよ。第1エリアで見かけた小屋と同じようなのがあったから、立ち寄ってみたら、食糧もあったけど、それより、攻略に役立つ消費アイテムを中心に置いてあったんだ。まあ、噂で持って行ってもペナルティはないって聞いてたから、いくつか貰って行ったんだ。そしたら! 次から次にモンスターに襲われたけど、何とか逃げ切れたんだよ。あれは助かったねえ。攻略情報が出回ってからは、けっこう攻略もスムーズにいけたかな」


 プレイヤーFの証言。

「砂漠のオアシスに、キャラバンあったぜ? テントがいくつも並んで、生産職の人たちが集まってた。おかげで、かなり補強できたよ。あそこ仕切ってた賑やかな兄ちゃん、良い人だったねえ。それにしても、ああいうことを仕切れる人って、スゴイよなあ。感心しちゃうよ」

 プレイヤーGの証言。

「攻略がなかなか進まないから、気分転換に砂漠を探索してたんだけど、蜃気楼で危なく迷うところだったよ。でも、そんな蜃気楼に向かって釣りしてる人がいたんだよねえ。そういえば、けっこう前に、似たようなことが話題になったことがあったよな。あの人も何か釣り上げてたみたいだし……。何だったんだろ?」

 プレイヤーHの証言。

「あー、ピラミッドの攻略な。トラップのせいで全然進まなかったんだけど、オアシスのキャラバンで売ってたアイテムのおかげで何とかなったよ。聞いたことないアイテムだったから、それがすぐ攻略に役立つとは思ってなかったんだけどな。でも、使ってビックリ! あれには驚いたねえ」

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