Ver.4/第41話
「いってきまーす」
シュンがログインしてくるのを待って、ハルマの家から出ると、サエラ達の4人組とネマキ達4人組が何やら楽しそうに話し込んでいるのが見えた。
どうやら、ネマキに対して主婦3人組が質問攻めしていたようである。
この村において、というか、Greenhorn-onlineの世界で、ネマキ以上に魔法の知識がある者は多くないだろう。ただ、ニャル、チイ、コイモの主婦3人組は、そんなことを気にしてる様子もない。
ネマキも、そんな分け隔てない態度が心地良いらしく、丁寧にアドバイスしているようだ。ハルマも何度か魔法の相談に乗ってもらったことがあるが、パジャマ姿と言い、普段の言動と言い、真面目に相手してもらえるとは思っていなかったのに反し、毎回丁寧にわかりやすく教えてもらえたものだ。
おかげで、現在、新魔法の育成に目途が立ってきている。
「いってらっしゃーい」
「で? どこ行くんだ? 明日も学校あるんだから、あんまり時間ないぞ?」
勢いに負けて出てきたが、最初から目的が決まっていたわけではない。
「ちょっと待ってくれ。よく考えたら、ハルマと一緒にちゃんと戦うの久しぶりだし、せっかく、モカさんとリナもいるんだ。どこかエリアボス抜けられないかなと思ってるんだけどな。どこがいいか考えてる」
「あー。それ、いいね。どこにしようか」
チップの提案に、モカも乗り気だ。ハルマも、チップの言葉で、しばらく一緒に遊んでいなかったことを思い出す。
前回、モヤシに〈大工の心得〉を取得させるために一緒に行動したが、結局、エルシアとハンゾウのイベントはあったものの、個人イベントであったため、ボスやダンジョンを協力して攻略した感覚ではない。
いつぶりだろうか? と、思い返すと、〈聖獣の門〉のイベント以来であることに少し驚いてしまう。しかも、途中、第2回の〈魔王イベント〉の予選である、〈不死者の砦〉も本当は一緒に攻略するはずだったことも思い出し、気まずさが増してしまった。
「だったら、あそこにしようよ。ロシャロカ」
ハルマが考え事をしている間に、提案したのは、意外なことにマカリナだった。モカについて行きたいだけだと思っていたら、予想以上に乗り気であったらしい。
「ロシャロカか……。悪くないけどなあ」
チップも、事前情報と戦力を考慮し、検討を始める。
ただ、チップが少し渋っているのは、もっと難易度の高い所の方を狙ってもいいのではないか? というジレンマだ。
何しろ、そこは、ハルマがひとりでも進めるのではないかと勧めた場所である。とはいえ、ロシャロカの先も、未踏エリアのひとつであるため、かなりの高難易度に違いない。
「意外だな。リナって、俺と一緒で、戦闘は二の次ってイメージだったのに」
「そうなんだけどさ。新しいエリアには進みたいじゃない? それに、ロシャロカの先だったら、新しい採掘ポイントとか見つかりそうだからね。もしかしたら、新しい鉱石も見つかるんじゃないかと思って」
やはり、彼女も生産職がメインであった。
「その意見、乗った! チップ、俺もロシャロカに行きたい!」
未知なる世界。それは、どこでも一緒だが、どうせなら目先の利益も欲しいものである。
まだ見ぬ世界よりも、まだ見ぬ素材の方に興味は完全に移っていた。
「オレが検討してるエリアだったら、どこ抜けても新しい素材見つかりそうだけどなあ……。まあ、いいか。珍しくやる気出してることだしな」
こうして、一行はロシャロカに向かうことになるのだった。
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