Ver.4/第40話

「へー。ってことは、魔界は、シミュレーションRPGに近そうだな」

「そうかもな。テスタプラスさん達も、そんなこと言ってたわ。ただ、白石さんの話だと、白石さんって、チーフプランナーな、だと、全く別ゲームだと思ってた方が良いって言ってたから、あんまり参考にならなさそうだけどな」

「そうなのかあ。そりゃ、そうか。いくら〈大魔王決定戦〉の出場者への特典とはいえ、情報丸々見せるわけないか」

 ハルマとチップが話し込んでいると、見学を終えたマカリナ達も戻ってきた。どうやら、話も途中から聞こえていたらしい。

「少なくとも、魔界に出てきたイベントボスは、出てこないんじゃない? 特殊過ぎたでしょ? あれ」

「どうだろうなあ? 魔界に出てくるかわからないけど、どっかで出てくるんじゃないか?」

「え? そうなの?」

「あれ? リナは、見てない? 討伐モンスターリストに、ヘカトンケイルもエンシェントヒュドラも載ってるよ。テスタプラスさん達が戦ったボスは、さすがに載らなかったみたいだけど、似たようなドッペルゲンガー系のボスは出るんじゃないかって話してた」

 ハルマの言葉に、マカリナはメニューを開き、確認する。どうやら、モカも気づいていなかったらしく、同じようにメニューをいじり出した。

「ホントだ。あたしらとネマキさん達とで勝ったボスも載ってるわ。あんなのがエリアボスとかで待ってたら、大変そうだねえ。ちょっとでも手を緩めると、モンスターの軍勢に囲まれたからなあ」

「俺の戦ったヘカトンケイルも、もしかしたらエリアボスなのかもな。フォリートレントに近い相手だったから」

「それより、エンシェントヒュドラよ。あれは、ヤバい。白石さんの話ぶりだと、設定弄ってたのって、最後のアレだけよね?」

「だな。あんなにしんどい戦闘、そう何度もはできないよなあ。でも、あれって、リナがいたから最後まで戦えたようなものだよな。助かったよ」

「何言ってるのよ。最後に耐えたのは別問題として、ハルが用意してくれたアイテムがなかったら、どの道みんな最後まで戦えなかったわよ。アイテム、かなり使ったでしょ?」

「ははは……。トータルで、300以上使ってたらしい」

「え!? マジで!? 何か、ごめん」

「あー、いいの、いいの。おかげで、新しいスキル取れたから」

「おーい。話が弾んでるところ悪いんだが、そのエンシェントヒュドラのこと、教えてくれないか?」

 ハルマとマカリナのふたりで思い出話に盛り上がっていると、横からチップが割り込んできた。

「ああ、すまん。つい……」


「いやあ。でも、あれに勝てたのって、正直、ハルちゃんとリナちゃんが入ってくれたおかげなんだよね。ふたりがいない間に挑戦した時は、あんなに安定して戦えなかったもん」

 ハルマとマカリナ以上にエンシェントヒュドラと対峙した時間の長いモカが、しみじみと感想を述べる。

「ねえ? このふたり、生産職なんだよね?」

 説明を聞き、ユキチはチップに視線を向ける。

「みなまで言うな」

 語られたエンシェントヒュドラの全貌が見えてくると、どうやったら首を減らせたんだ? というレベルの相手であることが判明していく。

「いや、ホント、ハルちゃんの仲間の火力は高いし、回復も頼もしかったでしょ?  ユララちゃんのおかげで後衛も毒を気にする必要もなくなったし……。リナちゃんのスキルも後半強いから、もう、気づけば回りが仲間だらけになってて、うちらが必死に戦う必要ないんじゃない? って感じだったよ」

「いえいえ、俺なんか、途中からアイテム使ってサポートしてただけですから」

「そうですよ。あたしも、前半はただのお荷物でしたから」

 モカの言葉に、ハルマもマカリナも謙遜し合う。

 しかし、最終的に、モカ、ハルマ、マカリナの3人がそろって出した結論は一致していた。

「「「でも、一番すごかったのは、テスタプラスさん(テスピー)だよね」」」

「あー! やっぱり、ふたりとも思ってたんですね」

「そりゃ、あんな長時間、秒単位で指示出せるなんて、うちには無理だもん」

「わかりますぅ。もう、未来予知のスキルでも持ってるの? ってレベルでしたもんね」

 この反応には、チップ達も賛同できたようだ。

「お? 何か、急に身近な話になった」

「わかる。テスタプラスさんって、やってることは簡単そうなのに、全然マネできないんだよね」

「くそー。オレもこの3人みたいな特殊なスキルが取れなくてもいいから、テスタプラスさんみたいなプレーできたらなあ」

 中でも、チップの心に点いた火は大きかったようである。

「よし! 話聞いてたら、ジッとしてられなくなった。何か、倒しに行こうぜ!」

「えー? 急だな」

 ハルマは渋ったが、やる気を見せたチップに感化されたわけでもないだろうに、モカも乗り気になっていた。

「お? 面白そうだね。うちも一緒に行くよ」

「え? モカさんが行くなら、あたしもついて行こうかな?」

「おー! いいね、いいね。行こう行こう」

「よっしゃ、そろそろシュンも来る頃だろうから、そろったら、出発だ!」

 こうして、参加表明をすることもなく、連れていかれることになるのだった。

 

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