Ver.4/第23話

「えーと? 何があったの?」

 つい最近聞いた気のする台詞を、ラキアが口にする。

 数日インできなかったラキアが、マカリナと一緒にやってくると、あまりの変わりようにポカンと口を開け、周囲を見渡していた。

 事前に話を聞いていたというのに、この反応なのも無理はない。

 隣のマカリナも、似たようなものだったからだ。

 石垣造りの質素な砦、木製の大きな門扉、ぐるりと取り囲む城壁の3か所に丸太を組んだ簡素な物見櫓が配置されている小規模な拠点。

 ……だったはずである。

「久しぶり。この前、大規模な襲撃があって、あちこち破壊されちゃったから、修復ついでに強化しようと思ったけど、せっかくだから拠点の拡張もやってみたんだよ。いやー、ここまで大きくなるとはビックリだよね」

 転移場所から出て、まず目に入ったのが、立派な豪邸というか、もはや城と呼べるものであった。

 それだけで、すでに知っている拠点の大きさに匹敵するというのに、城を取り囲む城壁がその背後に設けられている。城壁を辿って周囲を見渡してみると、明らかに以前よりも数倍の広さがあることがわかった。

「これ、全部、ハルがひとりでやったの?」

 元の砦の広さでさえ、ちょっとした球場サイズあるのだ。それの数倍の広さになっているのだから、かなりの作業量だったはずである。

「違う、違う。昨日、落ちる前に拡張レベルマックスに設定してゴールド払っておいたら、NPCが突貫で造ってくれたんだよ。だから、内装とか強化とかは、これからやらないとだね」

「そっか。拡張だけなら、素材の提供は必要なかったもんね。……って、ん?」

「どうした?」

「今、レベルマックスで設定した、って言った?」

「そうだよ?」

 マカリナは、拠点の拡張に必要なゴールドを思い出し、冷や汗が流れる想いだった。何しろ、最低レベルでも50万ゴールド、最高レベルだと500万ゴールドが必要だったはずだからだ。

「え? もしかして、進めば進むほど、拠点の拡張にかかるゴールドって、減っていくシステム?」

「いや? きっちり500万G取られたよ?」

「ぐはっ!? ハルって、そんな大金持ちだったの!?」

「あ……。あはははは。最初に会った時に言ってなかったっけ? 俺、わりとゴールドに余裕あるって」

「言ってたわね、そういえば。いや、でも、あの言い方は、普通の人よりはちょっと持ってますよ、程度だったわよ? 500万G使っても、後で戻って来るとは言っても、来月までどうするの?」

「大丈夫、大丈夫。リナ達になら教えてもいいかな? 俺、蘇生薬の特許を持ってるおかげで、未だに毎日数万から数十万ゴールド入って来るんだよ」

「はあ!? あれ、ハルのレシピだったの!? あんなもの、どうやって見つけたのよ!?」

「どうやって、って。そこは、あんまり詳しく教えられないけど……。あ!」

 さすがに、〈贋作〉のことは教えない方がいいと判断したところで、別のことを思いつく。

 思いついてしまったからには、すぐにでも試してみたくなるというものだ。

 ハルマは、驚かすだけ驚かしたマカリナを放置して、魔界から出て行ってしまったのだった。

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