Ver.4/第19話

「昨日のプレイべ、どうでしたか?」

 ゴールデンウィークも終わり、学校も始まったため、魔界に入るのも少し遅い時間となってしまっていた。

 テスタプラス達とマカリナ、ネマキ連合パーティで撃破した砦は、とっくに通り過ぎ、現在、彼らが攻略を進めているのは、最初の拠点から6つ目のエリアであった。

 便宜上、8号砦と呼んでいる。

 この辺まで来ると、周囲のモンスターの強さもかなりのものになっており、モカやネマキを以てしても、容易に蹴散らすことはできなくなっている。

 そのため、現在、最前線の8号砦を拠点化し、強化に努めているところだ。

「いやー、それが、聞いて下さいよ、ハルマさん。最初こそ大盛り上がりで大成功だと思ってたんですけど、3回目のバトルで乱入してきた連中が、最近PVPエリアで悪さしてる集団で、暴言妨害を繰り返されて台なしにされちゃったんですよ」

「えええ……」

 チョコットがしかめ面で愚痴り始めると、ナイショやニコランダも思い出して腹を立てたのか、苦々しい表情になってしまう。

「あいつら、闘技場だったら、ある程度の暴言は許されるのを知っていて、わざとやってやがったんですぜ。何が面白くて邪魔しやがるんだ、って話ですぜ」

「元々が別のゲームで問題起こして追い出BANされた連中が中心に暴れてるから、やることがエグイんだよな。Greenhorn-onlineは、かなりライト層向けのゲームだから、刺激が足りない連中が同調して、ちょっと無視できない集団になりつつあってね。困った話だよ」

 40人VS40人の大規模戦闘の話が聞きたかっただけなのに、思いもよらぬ深刻な話になってしまい、ハルマもどう答えて良いのか困ってしまう。

 正直、PVPエリアに近寄ることがない上に、プレイヤーイベントに顔を出す気もなかったので、完全に他人事だからだ。

 それでも、憤懣やるかたなしといった雰囲気の3組を前にすると「災難でしたね」と、口にせずにはいられなかった。

「その話、うちも聞いたばかりだわ」

 ハルマのせいではなかったが、結果的に怒りを再燃させてしまったところ、思わぬ人物も話題に混ざってきた。

「え? モカさんも?」

 自分同様、我が道を行くタイプであるため、こういう話には疎いと思っていただけに驚いてしまう。

「ほら、イースターで一緒になったグダ君達、知ってるでしょ? あの子達が、PVP仕掛けられて酷い目にあったらしいのよ。スズコがめちゃめちゃ怒ってた。ハルちゃんも、今のスズコには近寄らない方がいいよ」

「あー。それこそ災難でしたね。あいつら、勝てる相手ばかり狙って仕掛ける上に、わざと戦闘を終わらせずにいたぶって楽しんでるらしいですからね。逃げても、回りを仲間で取り囲んで、次から次にPVP仕掛けてくるらしいです」

「うへぇ。陰湿……」

 思っていた以上に問題行動を起こしていることを知り、ハルマも気持ちが重くなってしまう。

「でも、それだけ問題行動起こしてるのに、ペナルティスキルないんですか?」

「そこが、厄介なところでね」

 ハルマの素朴な疑問に、ナイショは口ごもる。

「PVPそのものは仕様として認められているシステムに則ってやってる上に、そこで使ってる言葉も暴言って認定するのが曖昧なものを使ってるんだよ。暴言と煽りの判断が微妙なラインを使ってるから、処罰も難しいんじゃないかな?」

「だから、より悪質なんですよ」

 ナイショの説明に、チョコットもうんざりした表情を作る。

 重たい空気が漂い始めたが、そこで場の雰囲気をガラッと変えてくれたのは、マカリナであった。

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