Ver.3/第10話

「〈聖獣の門〉の常設化は新規プレイヤーさん向けの話でしたが、次の話題も、新規プレイヤーさん向けの追加要素です。とはいえ、既存のプレイヤーさんにも関係する方が大勢いらっしゃるかと思います」

 そう告げられてから切り替わった画面には、ふたつの事柄が記されていた。


『〈冒険者ギルド〉開設』

『〈モンスター牧場〉開設』


「〈モンスター牧場〉も気になりますけど、ついに〈冒険者ギルド〉が! 実は、今までなかったんですよね!?」

 今度のスライドには、クラッチだけでなく、視聴者からの反応も大きなものとなっていた。

 多くのMMORPGに欠かせない冒険者ギルドだが、Greenhorn-onlineの世界にはなかったのである。

「本当に、ついに……、ですね」

 吉多だけでなく、安藤も感慨深げな表情だ。

「それで、このふたつの施設は何ができるのでしょうか?」

「はい。それでは順に説明していきますね。〈冒険者ギルド〉ですが、まずは初歩的なクエストの受注が可能になります。最初のうちはプレイヤーさんに見つけてもらいたいという安藤さんの要望もあって、こういった初歩のクエストも公開していなかったのですが、だいぶ情報も出回っていますので、新規のプレイヤーさんの負担を減らすためにクエストの案内を出すことにしました。今後も適宜、こちらに追加していく方針です」

「なるほど。確かに町中を細かく調べて回らないといけないのは、地味に手間でしたからね」

「そうですね。なので、初歩的なクエストに限り、〈冒険者ギルド〉で受注と報告ができるようにします。もちろん、特殊なクエストがこちらに並ぶことはありませんので、新規のプレイヤーさんがシステムに慣れるためのものだと考えてください。そして、次が本命の役割になります」

「はい。何でしょうか?」

「〈冒険者ギルド〉で、NPCの仲間を雇うことができるようになります。これによって、ソロプレイヤーの方でも人数の上限までパーティを組むことができるようになります。エリアボスであるとか、クエストボスの討伐に活用いただければと思います。ただし、このNPCはプレイヤーキャラと同じ扱いになりますので、経験値の分配であるとか、スキルの取得であるとかに影響が出ますので、ご了承ください」

「おっと、これは冒険の幅が広がりますね。気になるのは、どういったNPCを雇うことができるのか? ですが……」

「紹介されるのは、実際に存在するプレイヤーさんと同じステータスのNPCです。装備も抽出したタイミングと同じ装備品になりますが、使えるスキルや魔法は、レベルや装備品によって固定です。雇うことができるのも、自分と同じレベルまでの制限があります。見た目とキャラクター名はランダムで変化しますので、例えば、クラッチさんのNPCを雇ったとしても、雇っているプレイヤーさんには、それがクラッチさんの情報を元にしたNPCだとはわからないようになっています。ただ、レベル10くらいまでは、こちらが用意したNPCも多く混ざっていますね。このくらいまでは、皆さんすぐに駆け抜けちゃうので、サンプルが少なくなる傾向にあるので。この辺の調整も、皆さんの進行具合で調整していく方針です」

「はー。と、いうことは、もしかしたらハルマさんやモカさん、テスタプラスさんといった方々は意外にレベルが低いので、こういった魔王経験者を雇えるかもしれないということですね?」

「そうなりますね。でも、ステータスと装備が同じなだけで、使えるスキルも魔法も全く違うので、例えば、モカさんを元にしたNPCを雇えたとしても、〈デュラハン〉みたいな強力なスキルを使ってくれることはありませんよ?」

「あー、やっぱり、そこは無理なんですね。ということは、魔王プレイヤーを雇えたとしても、もしかしたら自分よりも弱いかもしれないわけですね」

「そうですね。まず、間違いなく強くはないです。それに、NPCはテイムモンスターを連れていませんので、そこでも大きな差が生まれてしまいますね。あくまでも補助的なシステムなので、場合によっては今までと同じやり方で挑戦した方が良い場合も出てくると思います」

「なるほど。それでは〈モンスター牧場〉の方は、どういった施設なのでしょうか?」

「はい。そちらも説明しますね」

 そういうと、吉多は台本をぺらりとめくる。

 

「〈モンスター牧場〉ですが、こちらはテイムモンスターの貸し出しを目的にした施設です。ただ、これは新規プレイヤーさん向けの施設ではあるのですが、レベル20以上のプレイヤーさんで、且つ、テイムモンスターを所有していないプレイヤーさん限定のサービスですのでご了承ください。また、借りる場合も、種類の指定はできず、ランダムでの貸し出しになります。ただ、ここで貸し出すテイムモンスターも、実際に誰かが使役しているテイムモンスターを元にしていますので、どんな種類がいるのかを調べるという目的での使用も可能です」

「おー。今回は、だいぶ新規プレイヤーさんや、ソロプレイヤーさんに向けた追加要素が多いイメージですか?」

「そうですね。〈魔王イベント〉に参加されるプレイヤーさんも多いですが、ライト層や新規の方も増えてきましたので、その辺の方が遊びやすい環境を整えたいとは、だいぶ前から話していたんです。今後も、そういった層が増えていくと思いますので、気軽に手軽に遊べて、それでいて〈魔王イベント〉といった高難易度のイベントにも興味が出てきたら参加してもらいたいな、というところです」

「〈魔王イベント〉みたいなPVPがメインのイベントだと、ちょっと怖いなという方もいますからね。住み分け、じゃないですけど、楽しみ方を選べるようになるのは良いことですよね」

 クラッチの締めの言葉で、追加要素のコーナーは終わりとなり、次の話題へと移ることになるのだった。

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