Ver.3/第9話
『追加コンテンツ〈聖獣の門〉』
スライドに書かれていたのは、冬に行われたイベントと同じものだった。
「え? 〈聖獣の門〉ですか?」
これには、クラッチもどこか拍子抜けした表情だ。
「もったいぶって発表したわりに、ですが、そうですね。〈聖獣の門〉が常設コンテンツとして登場します。こちらは前回のイベントで〈聖獣の卵〉を獲得できなかった方や、新規のプレイヤーさん向けのコンテンツとなります。もちろん、新たに〈聖獣の卵〉を獲得できますので、タロットカードの破片が半端に残っている方も、2体目、3体目を目指して挑戦していただけます。ただし、すでにテイムモンスターを所有している方、及び、所有できる条件を満たしている方の場合、タロットカードの破片は、かなりドロップしにくい設定になっていますので、年単位での挑戦が必要になると思います。それと、イベント同様、挑戦するには〈聖獣の門のカギ〉が必要で、カギは週に1回3個の配布で、持越しはできませんのでご注意ください」
「いわゆる、日課ならぬ、週課というやつですね」
「そうなりますね。破片のドロップ率は、イベントの時とは違う設定に調整していますので、前回のイベントに参加できなかった方や、新規の方でも遅くとも2ヶ月くらいで〈聖獣の卵〉は獲得できるはずです。なので、これから始めようと思っている方も、安心してもらえると思います。すでにテイムモンスターを所有している方だと、新しいタロットカードの破片を入手するのは難しいかもしれませんが、ケセランパサランが稀に出現するようになっていますので、〈魔法のおしろい〉をゲットできるチャンスがあります。そちらを狙ってみるのもいいかもしれません」
「おー。ケセランパサランも出るんですね。そうなると、新しいパートナーも少しは獲得しやすくなるかもしれませんね」
「はい。それに合わせて、白紙のカードを好きな大アルカナのタロットカードに描きかえることができるアイテム〈天啓の筆〉も登場しますので、そちらもお待ちください」
「おー! 私も、白紙のカードは4枚、かな? 持っているので、待っていました! まあ、それでもコンプリートには遠いですけど」
「そういう方も多いかもしれませんね。テイムモンスターを2体以上所有する方が増えるのは、もう少し先かな? と、思っています」
「あれ? でも、それだと、やっぱり新規の方とかは不利な状況になるんじゃないですか?」
クラッチは根本的な問題にすぐさま気づいた様子だ。
何しろ、〈聖獣の門〉で獲得できる〈聖獣の卵〉は1つが限度に近く、2つ以上となると年単位での挑戦が必要になるからだ。遠くない未来、テイムモンスター1体だけのプレイヤーと、2体以上いるプレイヤーで差が生まれることになる。
それに答えたのは安藤の方だった。
「その辺は、こちらでも検討したのですが、新規プレイヤーばかりを優遇するのではなく、まだ1年と経っていないので、古参と表現するのも何ですが、早くから遊んでいただいている方に有利な状況となってもいいんじゃないかと考えているんですよ。それと、〈聖獣の門〉以外でも〈聖獣の卵〉を獲得できる仕組みを同じタイミングで実装しますので、そちらを探してみるのも良いかもしれませんね」
「お? それは新規プレイヤーさん向けの仕組み、でしょうか?」
「あー、いやいや。これは、全プレイヤーさん共通です。ですので、案外、ハルマさんみたいな方が、あっさり見つけちゃうかもしれませんが……」
そこで安藤は、自分の言葉で戦々恐々としている表情を作っていた。
「ちょっと、安藤さん。わりとシャレになっていませんよ?」
「そうだねえ。私も今、自分で言って怖くなったよ。ハハハハ」
「と、とにかく、今後はもっとテイムモンスターが身近になる、ということで間違いないってことですね」
「そ、そうですね。既存プレイヤーの皆さんも、新規のプレイヤーの皆さんも、お楽しみにお待ちください。それでは、これに関連して次の発表に移りたいと思います」
どことなく微妙な空気に傾きかけたが、吉多は気を取り直して、次のスライドへと話題を逸らしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます