Ver.2/第81話
「うーん。これといって育成のヒントはないかあ……。追加で書いてあるのも、好物くらいだったか」
それでも、進化のバリエーションはいくつか知ることができたので、収穫なしとまでは言えなかった。
「エレメント系はマナを直接取り込むから食べ物は要らないとして、スライムは雑食。基本、体に取り込めば何でも溶かして吸収しちゃう、か。それでも、肉を好む傾向にあるんだな……。最近、ズキンにドラゴン肉も上げられてないから、どこかでドラゴンでも狩るか?」
マナとは、大地から直接放出される魔力エネルギーのことで、これを取り込むことでMPとなる。これを利用して自動回復しているのだが、吸収率は悪いため町中の安定した場所であっても、1分間に3しか回復できないのである。
しばらく考え込むと、シャムの属性を鑑みて闇の大陸に向かうことにした。おそらく、闇の大陸のマナは、シャムにとって相性が良いはずだからだ。
「なあ? ズキン。闇の大陸でシャムが倒せそうなドラゴンって、いるか?」
テイムモンスターに入る経験値は、プレイヤーの半分である。ただ、ハルマの場合は〈トリマー〉のスキルのおかげで、6割程度の経験値が得られている。それでも、トワネの武器登録と同じく、ただ戦闘に参加しただけではダメで、一定量のダメージを与えなければ経験値は分配されないのだ。
なので、倒す必要はないが、それなりに貢献できる相手でなければならない。
こういう具体的なようで漠然とした質問をしても、普通のNPCでは支離滅裂な答えになることが多いのだが、ハルマの仲間達は通常AIよりも優秀らしく、膨大なデータベースから期待していた答えを導き出してくれることが多かった。
「そうですねえ。ベビーサラマンダーなら倒せると思いますよ。それに、あれは、肉が柔らかくて美味しいです」
「お、おう……。そうか。それで、ベビーサラマンダーは簡単に見つけられるのかい?」
「大丈夫です、旦那様。ザッルームとスコアタを隔てる山脈に行けば、簡単に見つけられますよ。ただ、山頂付近にまで行ってしまうと、サラマンダーに成長したものが徘徊していますので、注意してくださいね」
「スコアタ? 聞かない地名だな。ザッルームで山脈探せば、わかるかな?」
ザッルーム地方はズキンと出会った場所であるが、スコアタは初耳だった。それもそのはずだ。まだ攻略されていないエリアなのだから。
ハルマも新エリアを目指すつもりは今のところなかったので、大人しくザッルームに向かうことにした。
「えーと? 山脈がありそうなのは、北東のエリアかな?」
マップを頼りに視線を向けてみると、薄っすらと山影が見えた。
シャムが加わり、更に大所帯になっていたが、ズキンとニノエが人型のおかげもあり、ラフやトワネをインベントリに入れておけば、3プレイヤーがそれぞれテイムモンスターを引き連れているようにしか見えなくなっていた。
それでも、まだ少し緊張感はあったが、慣れるのも時間の問題だろう。
ハルマは小さく安堵のタメ息を吐き出すと、目的のベビーサラマンダーを探しに移動を始めるのだった。
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