Ver.2/第80話
シャムの育成に精を出したいのは山々だったが、新年を迎えると何かと忙しくなっていた。
〈魔王イベント〉の予選は2月中旬から3月上旬にかけて行われ、3月中旬に本イベントの予定である。
間の悪いことに、予選の時期が学年末テストに重なってしまっている。
〈聖獣の門〉の時も、タロットカードの収集が遅れた原因がイベント前半と期末テストが重なったせいだったのである。
ハルマとしては、魔王に選ばれる気はさらさらないのだが、これに参加しないと魔王への挑戦権も得られない。それに、今度こそチップ達のサポートに回れると思っていただけに、どうしたものかと悩んでいたのだ。
そこで出た結論が、早めに試験勉強を始めるという実にシンプルな答えだった。そもそもチップと違い、普段から勉強はやっている。シュンのように成績優秀というわけでもないが、小言は回避できるラインを保っていた。
学校から帰る時間を少し遅らせ、図書館で勉強して学年末テストへの対策を整えている時だった。
図書館の本棚に向かい、並んでいる参考書をパラパラとチェックしていると、ふとゲームのことを思い出していた。
MPポーションの作り方を探していた時、図書館で時間を費やしたのと今の状況がダブったせいだ。
刹那、あの時の記憶が蘇り、奇妙な感覚になっていた。
何かが引っかかる。
幸い、あの時読んでいた本の種類は少なかったこともあり、引っかかりの正体はすぐに判明させることができていた。
「そういえば、図書館にあったモンスター図鑑って、テイムモンスターと種族が同じじゃなかったか?」
周囲を見回し、数人の生徒が静かに読書や勉強をしているのを確認すると、そっとスマホを取り出していた。
開いたのはGreenhorn-onlineの公式サイトである。
そこには、サービス開始前から公開されているモンスターの紹介ページがある。そして、そのモンスターと図書館のモンスター図鑑で紹介されてるモンスターは同じものだった。
「やっぱり、そうだ。系統だけで見ると22種類いる。レア系はないとしても、偶然じゃないよな?」
この頃になると、タロットカードの大アルカナ22種類、全部の種族が判明していた。レアモンスターに関しても、まだ完全とはいえないまでも、それなりに判明している。
そう思って検索をかけてみると、ハルマと同じことに気づいているプレイヤーがチラホラいたらしく、SNS等に感想が書き込まれていた。
しかし、ハルマの考えにまで達している者は見つからなかった。
「確か、あのモンスター図鑑、サイトの紹介よりも詳しく書いてあったよな? 育成のヒント、ないかなあ?」
こうなると、当然、勉強どころではなくなっていた。
そそくさと帰り支度を終わらせると、急いで家路につくのだった。
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