Ver.2/第75話

 安藤からテイムモンスターの登場が明言され、コメントもひっきりなしに流れていく中、話しは進んでいく。

 そうして話題は切り替わり、1枚のスライドが表示された。


『第2回 魔王イベント開催決定!!』


「おー! 来ましたね!」

「はい。今回は告知からスタートまで、だいぶ空いてしまうんですけどね……。本当は、もう少し間隔を空けずに開催したかったんですが、何とか想定していたスケジュール内で開催できることになりました」

「前回は盛り上がりましたからねー」

「そうですね。特に〈ゴブリン軍の進撃〉で活躍されたおふたりが、まあ強かった」

 吉多は感情たっぷりに回顧して見せた。それを受けて、クラッチも同調する。

「確か、ハルマさんが全勝で、モカさんが1敗だけ、という結果でしたよね?」

「正直、モカさんも全勝しちゃうんじゃないかと思っていましたが、負けてしまった戦いも見応えありましたからね」

「そうそう。プレイヤーの投票で1番人気だった試合が、あの1戦でしたものね」

「あれは、ちょっと意外な結果でしたね。ただ、全体的に魔王側が負けた試合の方が印象が強かったのか、上位に入る傾向にありました。あと、ハルマさんも人気が高かったんですが、あの方は、ちょっと異質というか、次元が違うというか、そんな感じだったので、全体的な人気はあるものの、特定の試合となると、あまり票は伸びなかったですね」

「ハルマさんはホントぉおおおに強かった! 3ヶ月くらい経っていますけど、私、今戦ったとしても、あの時のハルマさんに勝てる気がしませんもの。もう、絶望しかない強さで、見事に魔王として立ちはだかってくれましたからねえ」

 興奮を隠さないクラッチに対し、吉多は満足そうな表情を作った後で、どことなく気まずそうな表情になると、おずおずと話をつなげる。

「そこで、なんですが……。前回と同じルールだと、次回もハルマさんが魔王として参加された場合、まず勝てないだろうと我々の意見が一致しまして……」

「え?」

 気まずそうな表情のまま話を続けたかと思いきや、ゴンっとテーブルに頭をぶつけそうな勢いで頭を下げながら、重大発表を宣言した。

「ルールを大幅に変更します!」

 突然の発表に、クラッチも素で驚いたようだ。

「えー! ハルマさん対策、ってことですか?」

「いや。まあ、そういう側面もありますが、それだけじゃないですよ? 正直、ハルマさんにかんしては、ちょっとやそっと調整したくらいじゃ、どうにもなりませんから」

 クラッチの問いに苦笑いの吉多だったが、そこに安藤が割って入ってきた。

「そこは、私が話した方がいいかな?」

「そうですね。お願いします」

「ハルマさんを含めて、一部のプレイヤーさんの強さが、我々の想定を上回ってきているのは事実なんです。それを踏まえた上で、前回のルールだと魔王側の情報を全部開示して、万全の対策をとったとしても、勝てるかどうか怪しいのではないか? という判断になったわけです。

 ただ、魔王が強いのは、挑戦する側としてもやり応えがあって、好ましい傾向だと思うので、そこはあまり危惧していないんです? 私個人の見解としては、ハルマさんやモカさんみたいに、尖ったプレースタイルの方が、もっと多く出てくれた方が面白いと思っているくらいですので……。

 問題は、構成人数によって参加時間に差が出ていたので、長い人だと90分以上も拘束されてしまうのは良くないのでは? という意見も多かったことなんですよ。これは、生産職のプレイヤーさんにも参加のチャンスを作ろうとした結果なので、あれはあれで成功だったんですけどね」

「なるほど」

「ただ、生産職のプレイヤーさんの中にも強い人がいることがわかったので、それなら魔王城の探索は止めて、今回は、いきなり直接対決してもらってもいいんじゃないか? ということになりました。

 なので、回転率は上がるんですが、一度に参加できる人数は減ってしまうので、魔王プレイヤーの枠を200名から、一気に600名に増やします。

 それに伴って、時間切れになった場合の勝利条件も、両者生存の場合は魔王側の勝利ではなく、挑戦者側の勝利になります」

「おおー!? 魔王が一気に600名に増員なんですね!」

 ここで吉多が再び話に加わってくる。

「はい。なので、魔王になれるチャンスが3倍に増えました! 色々とルールが大きく変わりますので、詳しくは専用サイトでご確認ください。それと、今後も皆さんのご意見を伺ったり、問題点を協議したりして変えていきますので、そこはご理解いただけると幸いです」

「いや。どんどん面白くしていくだけじゃなくて、参加しやすくするためにも必要なことですからね。ところで、そうなると、魔王の選抜方法はどうなるのでしょうか?」

「そこも僕が説明しますね。今回は〈ゴブリン軍の進撃〉みたいなイベントがなかったので、候補プレイヤーは決まっていないです。ピックアップは何名かされていますが、今回も挑戦権獲得のためのダンジョン攻略で順位を付けて、決めようと思っています」

「というと、前回と同じようなルールですかね?」

「あー。だいぶ変わりますかね? 前回はポイント制でしたが、今回は純粋にタイムアタックの時間での順位になります。ただ、魔王プレイヤーに選ばれるのはパーティリーダーだけ、そして、魔王イベントには同じパーティメンバーの参加が必要になる、というところは変更ありません。諸々の詳細は、この後、専用サイトに上げますので、ご確認ください」

「あと、コメントでも質問が来ていますけど、テイムモンスターは連れて入れるのか? ということですが」

「大丈夫です。連れて行けます。更に言えば、パーティ人数に含まれませんので、プレイヤー8人、テイムモンスター10体。みたいなことも可能です」

「おー! それは、だいぶ戦い方が変わるのでは?」

「その辺のこともあって、どういうルールにするかが、本当に難しかったんですよねえ……。そちらも含めて専用サイトに上げますので、もうしばらくお待ちください」

「わかりました! それでは〈魔王イベント〉のコーナーはここまでということで、最後にお知らせをいくつか……」

 こうして和やかな雰囲気のまま番組は終了へと向かっていくのだった。

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