Ver.2/第54話
村の拡張の準備は終わり、後はそれぞれの家に所有者を登録するだけになっていたが、せっかくなので全員そろった日にやろうということになり、保留になっていた。
村にこもって大工作業をしている間にハロウィンイベントも終わっており、ゆっくりとした日常が戻ったところでハルマは町にやって来ていた。
「えーと?〈料理〉のスキルを教えてくれるNPCは、っと」
村の拡張と新規移住者の歓迎のために何ができるかと考えた結果、これといって思い浮かばず、パーティといったら料理だろうという安直なイメージから〈料理〉スキルを取得することにしたのだ。
ただ、〈料理〉スキルは〈釣り〉と並んで不人気スキルのひとつである。
何しろ、作った料理の味もしなければ匂いも食感もないのだから、見て楽しむ他にないのである。
それでも、その見た目だけでも楽しめればいいだろうと思い立ったわけである。
「けっこう、あっさりしたもんだな」
職人ギルドで最初に受けたクエストのように、料理教室のNPCから簡単なクエストを受注して、案内に従って野菜炒めを作るだけでスキル取得となっていた。
野菜炒めも、渡された食材を包丁で指示された通りに切り、指示された通りに調理していくだけで完成となったのである。
一応、切ったり焼いたりという作業は行うものの、包丁を数回入れただけで必要な分量が必要な大きさに切り分けられるし、火加減を気にする必要もない。味付けも、いつやったのかわからないうちに完成していた。全工程がものの数分で終わり、NPCに渡すと美味しく食べてくれたので、これで料理の勉強をすることはできないだろう。
こういった部分も、不人気の要因なのかもしれない。
『スキル〈料理の心得〉を取得しました』
『素材の一部を、食材としても使うことができるようになりました。また、食材専用の採取ポイントも出現するようになります。食材の採取量も、素材の採取量に含まれます』
『〈料理の心得〉専用レシピを覚えました。作れるレシピは、DEXによって変化します』
『料理道具のレシピを覚えました』
『DEXが常時20増える』
【取得条件/専用クエストのクリア】
「まずは、料理道具を作るところからか……。それとも売ってるのかなあ? 料理設備も買って帰らないとな」
そうやって自宅に戻り、包丁や鍋などの調理器具を自作する。
シンクやコンロ、オーブンといったものは料理設備に備わっているが、石窯などは家具の扱いで作ることもできるようである。
料理を作る環境を整えるために、世界樹の近くにもう1軒集会所のような場所を作ることになるが、それを含めて楽しく感じていた。
本格的に料理をする気はなかったので、ゲームならではのあっさりした感じの方が自分には合っている気がしていたのだ。
「さて。こんなもんかな?」
後は、翌日の歓迎会を楽しむだけである。
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