Ver.2/第53話
自宅の作業場で〈錬金〉を行い、材料をそろえ〈木工〉に移り、建材にする。〈木工〉でほとんどの建材、家具類を作ることができるのだが、金属の多い照明器具であるとか、布地の多いソファーといったものは〈鍛冶〉や〈裁縫〉で作らなければならない。
一度に全部の建材と家具を作ってしまうと自分のインベントリに収まり切らなくなるので、まずは土台部分だけを準備して、前もって準備しておいた区画に配置していく。
この段階でも、石造りの家にしたい者、木造住宅にしたい者、レンガ造りの家にしたい者、などなど好みが分かれる上に、庭の広さなどの要望にも応えていかなければならない。
しかも、村の中央には今後、どれだけ大きくなるのかわからないが、世界樹があるのだ。できれば、どの家からもその姿が見えるようにしたかった。
作業はイメージ通りに進むこともあれば、実際にやってみるとゲームのシステム上できないこともあり、やり直さなければならないことも発生するので、なかなか予定通りには進行していかない。
フィールドに出ると頼もしい仲間達も、こういう作業にかんしては手伝ってもらえないので、ハルマがひとりでコツコツやっていくしかなかった。
しかし、それが楽しかった。
あーでもないこーでもないと、誰かのために物作りをするワクワク感は堪らないものがある。
そうやって村のあちこちで作業をしていて気づいたことがあった。
「この村の住人も、マリーやズキンなんかと、あんまり変わらないんだな」
新しくハルマの仲間になったニノエと軒先で立ち話している老婆。ユララを追いかけてはキャッキャはしゃいでいる子ども達。トワネと一緒に世界樹のお世話をしている青年。
ただのNPCであるのだが、ちゃんとスタンプの村の住人として生活しているのである。
「村の拡張が終わったら、なんかしたいなー」
具体的に何かが思いついたわけではなく、漠然とそんなことを思うのだった。
ハルマの家の近くに建つ、レンガ造りのシンプルな家が2軒。一方の庭は狭く、もう一方の庭は広めの造りになっている。
そこから少し離れた所に、大きな石造りの家がある。無骨なデザインの家で、大きなわりに庭はほとんどない。
世界樹の近くには小さなログハウスが建てられ、広い庭にはハンモックが置かれているのが目についた。
ハルマの家から世界樹を越えて、村の外れに近い場所には、木造の中規模家屋が2軒並んでいる。どちらも白木の壁に赤茶色の屋根で、大きな窓から日の光を取り込んでいた。
そこから少し離れた所には、お城のような大理石で造られた石壁の豪邸が建っていた。知らない者がやってきたら、この村の領主の館かと思うことだろう。
村の中に建つ家はバラバラなため、街灯や垣根といったものを使って統一感を出している。
この他にも移住希望者の家を空いているスペースに建てていき、10日ほどかけて村の拡張は一先ずの完成となったのだった。
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