第70話
スキル〈離れ技〉
『トラップの遠隔設置が可能になる(初期値で5メートル。DEXによって延長)』
『遠距離物理攻撃の射程が伸びる(初期値で+5メートル。STRによって延長。戦闘エリア外まで延長可能)』
『常時DEXが100増える』
【取得条件/自身の戦闘エリアにいないモンスターを規定の数討伐】
スキル〈二刀流-燕〉
『利き手に装備しているものと同じ種類の武器であれば利き手でない方に装備しても攻撃力の補正が入らず武器の効果も失われない。装備中のダメージ量は両手とも0.7倍になる』
『常時発動スキルは重複する』
『戦闘スキルは、それぞれ連続して発動する』
【取得条件/尋常ならざるDEXを手に入れ、かつ、利き手を使わずに直接物理攻撃によって同格以上のモンスターを累計3000体討伐】
「こりゃ、また。取っちゃダメなやつだ……けど、俺の場合はそうでもないか?」
自分のステータスを再び確認して、DEXがトータルで1000を超えていることに気づくと〈二刀流〉を取得できるプレイヤーは極わずかであろうと思えた。
そもそも、利き手を使わずに討伐なんてラフやズキンがいなければ、まず不可能である。今後テイムモンスターが見つかれば、もしかしたら条件を満たすプレイヤーも現れるかもしれないが、なかなかハードルは高そうだ。
レアスキルの取得にもかかわらず、ハルマの反応が微妙な原因は〈二刀流〉になったところで一撃のダメージ量は減ってしまうのでは、もとの攻撃力が低いこともあってゼロダメージを2回続けることになりかねないことに由来する。
加えて〈片手剣の心得〉のスキルで覚える技のほとんどが、一撃のダメージは減るが手数が増える系統ばかりのため、なおさらダメージが入らない気がしていた。弓の場合は両手で扱う武器のため二刀流では意味がなく、杖も基本は魔法職用の武器のため余り旨味は感じられなかった。
対して、トラップの遠隔設置は便利に思えた。しかし、そもそもトラップを仕掛ける場面があまり思い浮ばない。射程距離が伸びるのも嬉しい効果だが、ハルマのステータスでは常に最上位の弓を装備することができないことから、火力不足は否めず、AGIも低いために回転数も上がらない。少し射程が伸びたところで、あまり変化は期待できなかった。
「仮に戦闘エリア外まで伸ばせたところで、防衛戦中みたいにエンカウントしないでダメージ判定が発生するなら使い道もあるんだろうけど、日常では意味ないよな? だいたい、役に立つとしてもSTRないから、超遠距離射撃ができるわけでもないし……」
あれやこれやと新しいスキルの使い道を考えていると、ふと思いつく。
「ガード率って、盾も武器も同じ扱いだったよな?」
魔加術で付加できる効果には、〈眠り耐性+15%〉であるとか、〈火耐性+10%〉というものがある。これらはスロットの数だけ効果は合算され、装備を工夫すると複数の状態異常や属性攻撃に対する耐性を100%にすることが将来的にはできるようになる――現在は、どんなに頑張っても無理――らしい。
例え100%にできずとも、高確率――体感的なことになるが、ゲームでは99%も0%も変わらないというおそろしい現象もある――でレジストできるようになったり、ダメージを軽減できるようになったりする。
ただ、装備品の部位によって付加できるものは決まっており〈眠り耐性〉の場合は足や腕、武器類には付けられない。そういった制限のある中で組み合わせを吟味して、自分にあった耐性をそろえる必要があるのだ。
ハルマは自身のスキルの中から、ガード率にかかわる部分を調べていく。
「〈片手剣の心得Ⅳ〉で7%あって、これが〈二刀流〉で重複されると14%」
「〈心眼〉で15%」
「〈盾Ⅰ〉で7%」
「片手剣にも盾にも魔加術でガード率がつけられる。装備できる中でマックスにすると、片手剣がひとつ13.7%で、盾が17.7%になって、こっちも片手剣はそれぞれ効果でるから……」
「理論上、トータルで81.1%か……。片手剣と盾のスキルが成長しても、さすがに100%には届かないかー。まあ、でも、これだけガードできれば、接近戦でもなんとかなるか? さすがに5回に1回当たるだけでも、俺のステータスだと無理か? せっかくの〈二刀流〉だし、ちょっと試してみようかな?」
これだけのガード率になることは、本来異常である。これを可能にしているのが、ともに激レアスキルである〈心眼〉と〈二刀流〉の存在だった。
しかし、ハルマは忘れていた。
ガード率はDEXによって補正が入るということを……。
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