万能の魔法剣士は真の能力を隠して田舎暮らしを目指す~貴族の令嬢や聖女様に目をつけられて理想の生活が遠のいてしまったのだが!?~

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冒険者ラルス

第664話俺は寝たいんだが?

エルラー家の新当主として、ゼルマが王家に認められてから二ヶ月が経過した。


俺は騎士という身分を捨ててヤンに戻っている。


家は前に使っていた場所で、ソフィーと一緒に暮らせるように改築も進めている。明日には完成する予定だ。


レイアウトに興味はなかったので、すべてソフィーに任せていたら何故か部屋は三に増えて、俺のベッドは大人数が寝れるほど大きなものに変わっている。他にも色々と手を加えており、壁を壊して家全体まで大きくする大工事までやっていた。


もちろん相応の金は必要となるのだが、ロンダルト王家やゼルマからの報奨金がたんまりとあるので、問題にはならない。


普通に生活していたら使い切れないほど残っているので、たまには浪費するのも悪くないと思っていた。


◇◇◇


「おい! そろそろ部屋に戻れよ!」


深夜、オヤジの宿で飯を食っていたら急に文句を言われた。


カウンター席から周囲を見渡すと誰もいない。


俺とソフィーは家の改築が終わるまでオヤジの宿に泊まっているのだが、どうやらくつろぎすぎてしまったようだ。滞在日数が一ヶ月を超えると、実家のような感覚で使ってしまうな。


「ヘルミーネちゃんとソフィーは?」

「今日も一緒に寝るらしい」


相変わらず姉妹のように仲がいい。色々とあってヤンに戻れなかった期間が長かったので、欠けてしまった時間を埋めているのかも。


「それじゃ、もう一杯飲んでも問題はないな」


深酒をしても咎める人間はいない。

ようやく平和な生活に戻れたんだから、このぐらいの贅沢は許されるだろう。


「俺は寝たいんだが?」

「寝ればいいだろ。俺は飲んでる」

「客を置いて寝るわけにはいかねーだろッ!」


怒りながらオヤジは、エールが入ったジョッキをカウンターに置く。

中身が少しだけ飛び散った。

文句を言いながらも注文を通してくれるのだから、意外と優しいんだよな。


「ありがとよ」


礼を言って一気に飲む。頭がぼーっとして気分が良くなってきた。


今日も気持ちよく寝れそうだ。


「お前、これからどうするんだ?」

「家が完成したら冒険者として活動する」

「金があるのに? 危険な仕事なんて、しなくてもいいじゃないか」


どうやら俺は、オヤジに心配されているようだ。


ゼルマとの約束がなくてもフィネに狙われているので、戦い続けるしかない。腕が鈍ってしまえば死んでしまう。金の問題じゃないんだよ。


「心配してくれるのはありがたいが、エルラー家の新当主と約束もしているからな。自由のため、冒険者として活動しなければいけない」


建前を伝えてから、オヤジが何か言おうとする前に席を立つ。


「安心しろ。ヘルミーネちゃんが悲しむようなことにはならないさ」


俺はともかく、ソフィーは死なせないという宣言だ。


代金をカウンターに置くと二階に上がる。

部屋に入ってベッドの上で横になると目を閉じた。


久々の冒険者活動にワクワクしている自分に気づく。


やはり俺は、人間ではなく魔物と戦う方が性に合っているんだろうな。



=====

毎日更新は難しそうですが、少しずつ更新再開します。

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