第三話 ライバルが登場しました
新しい飼い主である、
改めて迎えに来た新田ファミリーにあたいは無事引き取られた。弟犬たちも既に飼い主が決まっており、数日後には旅立つ予定だとか。みんな元気でねー。
「先日はありがとうございました。教えていただいた鮎のやなに家族で行ってみましたが、とっても良かったですよ。炭火で焼く鮎も美味しかった」
「そうですか。それは良かった」
新田(お父さん)がぶりーだーさんにお礼を言っている。新田(お母さん)もぶりーだーさんに手土産を渡してるね。
陸くんはあたいを大事そうに抱っこしてくれているんだけど……、陸くんの妹(
ぶりーだーさん、父ちゃん犬、母ちゃん犬、弟犬たちに見送られながら、あたいはいよいよ新天地に旅立った。
そして今世では初めてのドライブ。ここであたいは車酔いというものを生まれて初めて経験した。
前世であたいは車に強く、後部座席でのんびり昼寝できるぐらいだったのに……。あー、左右に揺れるのが非常に気持ち悪い。あたいはうぷっとなる吐き気を我慢しながら、キャリーバッグの中でぐったりしていた。
そんなあたいを陸くんが心配そうに見守ってくれている。普段はぼっち(あたいの勝手な思いこみだけど)の陸くんもこんな時には本当に優しいよね。
◆◆◆
途中車は何回か休憩を取りながら、何とか無事新田家へ到着。ふーっ、結構時間がかかったね。
ちなみに新田家が住む場所は、”緑の丘(ぐりーんひる)”と呼ばれる街らしい。
車の中で新田家の家族の会話を人語理解スキルで聞いていたが、どうやらこの街には、”やさいばたけ”や”ぼくじょう”、それに”かじゅえん”が多いそうだ。
途中車窓から見えた風景を前世で暮らしていた街と較べたけど、やはり緑が多い街だと思う。これは散歩も楽しみだ。ちなみにあたいの優先順位は、散歩>食事>睡眠の順番だ。
でも前世で経験した”チックン”をしていないので、まだ散歩は出来ないみたい。うーん、残念。
新田家は”電車”と呼ばれる乗り物が走っているのが見える場所で、”まんしょん”と呼ばれる、そこそこ高い建物にあった。
ブーンと音がする箱に乗って、しばらくすると扉が開く。玄関前から下の方を眺めると、人がちっちゃく見えるね。
ひとまず新田家の玄関から、あたいも陸くんに抱かれてお邪魔しまーす。廊下を通り抜け、少し大きめの部屋に入る。ここはみんなが集まる場所のようだ。
陸くんはその隣の部屋にある、金属製の大きなお部屋にあたいを優しく入れてくれた。もちろん水、ひんやり板、カリカリなど必要なものは全て準備されていた。
どうやらあたいは室内で飼われるらしい。まだちっちゃいあたいにはかなり広めのお部屋だけど、大きくなったら
ところであたいがまず真っ先にやらなければいけないこと、それは新田家内での順位付けだ。これは群れで生活する、あたいら犬にとっては非常に大事なことなの。
結果、飼い主である陸くんは当然一番、次はご飯をくれるお母さん、その次はあたいが三番目で、妹の
まだまだ慣れない環境なので、今日は大好きなカリカリもほんの少ししか食べられなかったけど、早く大きくなって、神様と約束した
あたいは長距離移動の疲れからか、お腹を上にしてぐっすりすやすや寝てしまった。やぁん、へそ出しするなんて女の子として恥ずかしいよぉ~~。
翌日の夕方、あたいはまだ散歩に行けないので、今日は陸くんに抱っこされて近所を探検中。
どうやら今は”なつやすみ”と呼ばれる時期で子供たちはみんな家にいるらしいが、陸くんの妹の
「あれ、陸じゃない」
”まんしょん”の中庭を通り抜けたところで、一人の女の子が陸くんに小走りで近寄ってきた。年は陸くんとほぼ同じくらいか。
その時、あたいの危険察知スキルが初始動。この子を警戒しろと頭の中で警告してきた。やばい、やばい。早く逃げないと……。
「何これ⁉ もふもふして可愛い‼」
女の子はそう言うと、陸くんからあたいを奪って、ギュツと抱きしめた。
「クゥーン、クゥーン(ちょっと⁉ く、苦しいって!)」
あたいはイヤイヤしながら体をよじるが、身動き出来ない。やっぱりこの女はとっても危険だわ……。
「おい、
陸くんがぶっきらぼうに言う。
「えー、だって可愛いんだもん」
女の子は渋々あたいを陸くんに返した。
「ももはうちで飼うことになった柴犬なんだ」
「ふーん、柴犬ねえ。黒いからハスキー犬みたいだよ」
「柴犬は赤毛が有名だけど、黒や
「へーっ、そうなんだ」
「ももちゃん、こんにちは。あたしは陸の
あたいの生涯のライバルとなる大和田
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