第19話:クエスト完了
アス子たちがゴブリンを倒してくれたので、その間に薬草のある場所まで駆け寄っていた。
また弓を使うゴブリンが出てきても大丈夫なように、アス子と御影が土と石の壁で周囲を囲ってくれている。
「今の内に集めよう!」
「は、はい!」
「ああ……アレムドの薬草はこれだ」
ライネスがタンポポの葉のような形をした草を毟り俺に見せてくれた。
「分かった、キーコ、これを十個……いや、三十個集められる?」
「ん」
アレムドの薬草を確認したキーコがウッドマンたちに指示を出して薬草を集めさせた。
五体のウッドマンたちは手際よく薬草を集めていき、あっという間に三十個集まった。
「す、凄いですね……」
シロン引きつったような笑顔で集まった薬草を見ている。
「十個は俺が。残りのニ十個は二人で分けてよ」
「……いいのか?」
ライネスは眉を潜めていた。
「ライネスたちは情報を教えてくれて、こっちは労力を提供した。ウィンウィンの関係だよ」
「……そうか、感謝する」
ライネルは観念したように笑い、薬草を袋をに詰めていった。
「これであとは帰ってギルドに報告すれば完了かな」
「はい!」
「薬草はうちが持ち運びますぅ~」
「分かった、ありがとう」
アレムドの薬草を今まで出番のなかったシャトルに渡した。
シャトルは糸を使った攻撃が得意みたいだけど、今はその糸がないので何もできずに辛そうにしていたので丁度良かった。
「火子、様子はどう?」
土壁の上で仁王立ちしている火子に現状の様子を聞いてみる。
「特に異常は見当たりませんマイマスター」
「分かった、それじゃあ今の内に下がろうか」
そこに壁を残したまま、俺たちはその場所から離脱して馬車の通る道まで戻ってきた。
「ふー、あとは馬車がくるのを待つだけだね」
「そ、そうですね」
全力疾走で逃げ戻ってきたので、シロンたちも少し息が乱れている。
アス子たちドールは相変わらず涼しい顔で直立していた。
「やっぱりマスタークラスの人って凄いんですね。私たち何もしないまま終わっちゃいましたし」
シロンが申し訳なさそうに苦笑いしていた
「ははは……」
ドールクリエイトという力は、俺が自分で得た力ではないので、自分の能力のことを褒められても素直に喜ぶことはできなかった。
そのあとは馬車がくるまでシロンがドールたちと他愛ない会話を交わし、俺たちは街へと戻った。
「クエストのアレムドの薬草取ってきました」
初めて見る受付の女性に取ってきた薬草を見せると、受付の女性は確認するように手に取った。
「……はい、確かにアレムドの薬草十個です。ではこちらの台に冒険者カードと手を乗せてください」
クエストを受けるときに使った同じ長方形の黒い箱を前に出される。
言われた通りに冒険者カードと右手を乗せると、箱の中で緑色の光が波打った。
「はい、これでクエスト完了となります。こちらが報酬の銅貨五枚になります」
木のトレーに丸い銅貨が五枚乗せて出された。
俺はそれを手に取り眺める。
「あのー……」
「なんでしょうか?」
「実は相場というものを知らないのですが、一食や宿に一泊する場合、いくらほどお金が必要になりますか?」
報酬としてお金を渡されたけど、俺はこの世界の相場を知らなかった。
なので知っているであろう受付の女性に尋ねてみる。
「……そうですね、一食で銅貨三枚から八枚。一泊するのに安い宿なら銅貨十枚ほどでしょうか」
「なるほど……」
貰った報酬は銅貨五枚。
一食分くらいのお金になるようだ。
一番最初のチュートリアルのようなクエストなら低くてもしょうがないと思いつつ、残り四枚の銅貨を手に取った。
「分かりました、ありがとうございます」
答えてくれた受付の女性にお礼を言ってその場を離れた。
シロンとライネスが待っている席へと戻る。
相変わらずギルド内の喧騒で賑わいを見せ、いるだけでも楽しい空間だ。
「ということで二人のおかげでクエスト完了できたよ。ありがとう」
「い、いえ! お礼を言うのは私たちです!」
「……そうだな、俺たちだけだったらゴブリンアーチャーに射抜かれて死んでいた可能性が高い」
わたわたと慌てているシロンと冷静に状況を見つめるライネス。
まだ駆け出し冒険者の二人みたいだけど、二人にはガーランドたちのように大成して欲しいと思っている。
特に大きなことをした訳ではないけど、この世界で初めてできた仲間ということで、俺の中で二人の評価は高い。
何か困ったことがあれば助けてあげたいと思うほどに。
「これからどうします──」
「大変だ!!!!」
冒険者ギルド内の喧騒を掻き消すように大声が響き渡った。
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