第28話 後日譚
― 後日譚 ―
時は流れ、1582年。桶狭間の戦いから22年後。
すでに、政綱、そして広正までもこの世を去っていた。
残された簗田弥次右衛門は、1人、十所神社で佇んでいた。当時の戦や、若き日の政綱、広正の姿を思い出していた。
あれから、信長は破竹の勢で、一気に天下を収めるかと思われた。しかし、今年に入り、京都本能寺で、明智光秀の謀反により信長が討たれたのである。戦国の世は、また混沌として来ていた。尾張もこの先、どうなるか分からない。その前に、弥次右衛門はずっと気がかりだったことをやっておきたかった。
23年前、政綱の名で、社を改築した時は、とにかく急いでいた。突貫工事だったため、今ではぼろも出始めている。もう一度、きちんと改築し、鳥居も作っておきたかったのである。
弥次右衛門は、すっかり曲がった腰で、ゆっくりと大工の棟梁の家へ向かって歩き出した。
そして、現代。
愛知県北名古屋市に今も残る、十所神社の棟札には
「永禄二年(1559年)簗田出羽守(政綱)社殿を造営、
天正十年(1582年)簗田弥冶右衛門社殿を寄進」
と刻まれている。
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