とある日常の重大な告白

Scene.075

 とある日常の重大な告白


 降り注ぐ蝉の声と膨らみ出す入道雲。丘の上に一本。碧い葉を燃やした桜。その木陰に一人の少女が佇む。吸い込まれそうな短い黒髪。碧い葉脈の映える白い肌。少女を見つめる男。その日は暑い日だった。

 神妙な顔で男が少女を見る。彼女の薄紅色の瞳が映す木立。ざわざわ、と風に揺れる。何処かで蜩が鳴き始めていた。

「殺したのよ。私が」

 呟く様で、それでもその声は確かに響いた。丘の向こうの空。肥大する入道雲。彼の指がトリガーに架かる。白いシャツの襟が風に揺れた。

 音は無かった。白いシャツの胸元を鮮血に染め、少女が崩れる。白い顔が蒼白へと変わった。

 ゆっくりと引き金から指が離れる。

「そうだと、君に言ってほしくなかった」


 これにて、了。

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