檻の中の脳髄
Scene.069
檻の中の脳髄
虫の声が聞こえている。絶え間なく。蛙の鳴き声と共に。鹿が遠くで嘶いた。
誰もいない空を見上げる。無数の星が浮かぶ、黒い空間。この光景の始まりはたったひとつの爆発からなのだという。その一点から、あらゆる現象が始まった。そして、私たちはその現象を知覚し出力することで認識する。
少なくとも“私たちの世界”はそうすることで表現されている。
では、試験管の中で培養され、何の入力も出力もされない、ある意味では“ニュートラル”な状態の脳は、意識を持っているのだろうか。ただ、その中を流れる電気信号のノイズだけで、そこに意識――或いは自我――が生まれるのだろうか。もしかしたら、その自我の目覚めをビッグバンというのではないか。
世界は誰かの夢の中に存在するのかもしれない。
星を眺めているとそんな思考をして仕舞う。
これにて、了。
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