林檎飴を兵器に

Scene.067

 林檎飴を兵器に


「あのね、私」

 白皙の面に紅を添えて、浴衣姿の少女がぽつり。暗い空に眺める星々が薄命に瞬く。古い鳥居の下、石の階段に腰を据える少年少女。照らす月明かりは蒼く、冷たい。遠くの方から風に乗って聞こえる祭囃子が耳に残った。

 丁寧に結われた少女の髪が夜風に彷徨う。木履が砂を転がした。少女の手には真っ赤な林檎飴。少年はただぼんやりと、しかし、しっかりと見つめる一点。赤いお祭り提灯、風に揺れ。ふらりぶらりと軌跡を描く。描かれた放物線、瞼に妬きつく。

 笛の音、太鼓に胸踊らせ、飛び出した縁日。あのときは赤蜻蛉が飛んでいた。けれど、今は振り返れば蛍が舞う。艶めく林檎飴に、色めく白い頬。夜の闇に紛れて何処かへ行って仕舞おうか、と二人で古鳥居へ。

「好きだよ」

 黒い瞳に花火が散る。


 これにて、了。

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