スカーレット・プリンセス

Scene.066

 スカーレット・プリンセス


 三つの塔が連なる城の御噺をしましょう。そのお城にはお姫様が住んでいたの。

 まんまるな両眸を、らんらんと輝かせて彼女は話を続ける。「綺麗だけれど、とても残酷なお姫様なの」

 処刑を見ることが大好きだったの。

 でも、彼女だけじゃないわ。街の人たちも大好きだったの。処刑が公開される日は早起きして、お化粧して出かける程ね。ファンデーションで覆われた死体めいた白い肌に、血の様に赤いルージュを点して、マスカラは青ざめた罪人みたく。

 石積みの城塞は色めき立ち、お祭り騒ぎ。

 私から取り上げた悪趣味な指輪を見つめながら彼女は微笑んで、純白のドレスを翻した。

「さあ、観客がお待ちかねよ、伯爵夫人」

 最期の舞台へと続く、反逆者の門の先にて。


 これにて、了。

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